時を超えて輝く、グラマラスなダイヤモンド
時代を物語るデコラティブな曲線やアラベスク模様に彩られた美しいデザイン。大ぶりで存在感のあるクリップは、かつてキューバのカマルゴ伯爵夫人によって所有されていた。上・“トランスフォーマブル クリップ”(Pt×WG×ダイヤモンド)9042万円(参考価格) 下・“ヌーヴォー トゥールビヨン イヤリング”(Pt×WG×ダイヤモンド)2653万2000円(参考価格)/ともにヴァン クリーフ&アーペル ●お問い合わせ/ヴァン クリーフ&アーペル ル デスク TEL:0120-10-1906微細な違いから当時の作り手の技を想う
解説/山口 遼(宝石史研究家)
ジュエリーという品物は、とても頑丈だ。踏んづけたり、金槌で叩いたりしない限り、普通に使っている分には壊れない。壊れても補修ができる。その結果として、100年、200年前のジュエリーが市場に登場する。
こうしたジュエリーはアンティークと呼ばれ、英国でも日本でも、今から100年前以前に作られたことが証明できれば美術品として扱われ、輸入関税はかからない。しかし昔のものは数も少ないし、一度買った人が売り出すことも少ない。
その結果、純粋のアンティークでは足りず、その後に作られたものをヘリテージあるいはエステイトジュエリーと呼び、新しい市場が生まれた。今回は初めて、そうした作品を紹介する。
下写真のクリップは「ヴァン クリーフ&アーペル」が1940年代に、イヤリングは50年代に作ったもの。
ブリリアントカットとバゲットカットのダイヤモンドだけを組み合わせたシンプルながら見事な作品で、クリップは左右に切り離しても使える。
クリップの外側のダイヤモンドを留める爪の一方を尖らせて外に突き出し、アクセントにしているのが、いかにも40年代という時代を感じさせる。こうした微細な違いを見つけ出すのが、ジュエリーを楽しむコツである。
第二次世界大戦直後の、ダイヤモンドもそれを買う人も非常に少なかった時代に、これだけのジュエリーを作り、売った。ヴァン クリーフ&アーペルの、さすがといえる名品である。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2022年6月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。