時代の気分を見事に表現したモダンで軽やかなデザイン
ヴァンドーム本店リニューアルから1年を記念して誕生したコレクション。ティアラという伝統的なアイテムにフレッシュな空気感を与える、螺旋のデザインが見事です。ローズカットダイヤモンドとブリリアントカットダイヤモンドの組み合わせが、輝きに奥行きある表情をもたらしています。ティアラ「トルサード ドゥ ショーメ」(WG×ダイヤモンド計87.5ct)9559万円/ショーメ ●お問い合わせ/ショーメ TEL:03(5635)7057ヴァンドーム広場の塔をモチーフにした傑作
解説/山口 遼(宝石史研究家)
世界の大都市の中で、大宝石店が並んでいる場所としては、日本の銀座もトップを争うが、グランメゾンと呼ばれる宝石店の本店が顔を揃えている場所としては、やはりパリのヴァンドーム広場だろう。
ヴァンドーム広場の中央には、浮き彫りを施したブロンズの板を螺旋状に巻いた塔が立っている。今回ご紹介するのは、この塔にインスピレーションを受けた「ショーメ」の新作で、文字どおり螺旋を意味するトルサードと呼ばれるシリーズだ。
ショーメの螺旋はちょっと違う。螺旋の部分を中心の柱に巻きつけるのではなく、柱から離れて空中に浮いた螺旋をジュエリーのデザインとした。その大胆さは、さすがといわざるをえない。
結果、螺旋は空中を自在に飛び跳ねるように、予想もしないフォルムを作り出している。このティアラは、細い金属の線にびっしりとダイヤモンドを埋め込み、それを不定形の螺旋として、まったく非対称の流れになっている。
もともとティアラというジュエリーは、王侯貴族の女性が正装の場合にだけ用いるアイテムで、左右対称の威風堂々という感じのものが中心であったが、さすがはショーメ、その伝統を軽々と乗り越え、大胆で軽快な、これまでにまったくないティアラを作り出した。
創始者マリ=エティエンヌ・ニト以来、“ティアラのショーメ”といわれた伝統を見事に今に引き継いだ、新たな名作といえる。
表示価格はすべて税込みです。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2022年7月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。