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アルビオンアート・コレクションに学ぶジュエリーの真髄。カメオとインタリオの奥深い世界

2023.02.07

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これぞジュエリーの真髄 第2回(01) カメオとインタリオ 有川一三氏が主宰する「アルビオンアート」の歴史的な芸術品の数々を、宝石史研究家の山口 遼さんによる解説で紐解く、ジュエリー連載。第2回は、カメオとインタリオの奥深い世界をご覧ください。前回の記事はこちら>>

古代のものに命を吹き込む


カステラーニ製作 カメオとルビーのストマッカーとイヤリング

1.[カステラーニ 製作]カメオとルビーのストマッカーとイヤリング
製作年代:カメオ/16世紀 セッティング/1850~1860年頃
製作国:イタリア



最初に、カメオ17個を使った強烈なストマッカーとイヤリングのセット1をご覧ください。カメオはおそらく中世以降の各地で作られたものを集めて使い、ブローチとしては19世紀半ばに作られたものです。前回の記事でもご紹介したカステラーニの作品ですが、もの凄い迫力です。

平らな素材の表面に、模様などを彫り下げるのをインタリオ、彫り上げるのをカメオといいます。インタリオは今ではほとんど見ることはありませんが、カメオは日本の女性が大好きなジュエリーの一つですね。

実はインタリオの方がはるかに歴史が古く、数千年も前のメソポタミアで最初に作られています。

ネオ・アッシリアンのアゲートによるシリンダー・シール

2.ネオ・アッシリアンのアゲートによるシリンダー・シール
製作年代:紀元前4世紀
製作国:アッシリア


上の2つの筒状のものは、一個のシリンダー・シールの裏表です。荷物などに紐をかけ、結び目に粘土を貼り付けて、その上にこれを転がすと模様が浮き出ます。これで荷物が開けられていないという証明になるのです。

こうしたインタリオのデザインは、彫り上げるよりも彫り下げる方が簡単なこともあり、多くのジュエリーに使われてきました。

ブドウを収穫するキューピッドのリング

3.ブドウを収穫するキューピッドのリング
製作年代:紀元前4~3世紀
製作国:ギリシャ


ローマン ニコロ・インタリオ シルバー・リング

4.ローマン ニコロ・インタリオ シルバー・リング
製作年代:3世紀
製作国:ローマ


ギリシャで作られた金の指輪3、さらには白と黒の2層の石を利用して、静かな農村の風景を描いた銀の指輪4などが好例です。しかし、彫り下げには欠点があります。デザインがよくわからないのです。

そのため、やがてデザインを彫り上げるカメオが登場してきます。ギリシャの初めの頃ですが、その目的が純粋に飾りのためだったのか、宗教的な理由があったのかは不明です。おそらく古代の人々は、自分が尊敬するもの、愛するもの、信頼するものを具体的な絵としてカメオに彫り上げ、それを身につけることで安心を得たのではないかと思います。

こうしてギリシャ時代、さらにはギリシャ文明を模倣したローマ時代になると、大量のカメオが作られ、その多くは王侯貴族のプロフィルをデザインしたものになります。

ローマのキー・リング

5.ローマのキー・リング
製作年代:3世紀後半~4世紀
製作国:ローマ


5のキー・リングと呼ばれる指輪は、私を忘れるなという意味を持ち、耳をつねる指のデザインが非常に珍しいものです。さすがに今に残るものは少ないのですが、このカメオという素材は、後世のルネッサンス時代以降のものも含め、何度も別のジュエリーの素材として作り替えられるという特徴があります。

ヘレニズム ヘラクレス インタリオ・リング

6.ヘレニズム ヘラクレス インタリオ・リング
製作年代:紀元前3世紀
製作国:ギリシャ


1がその典型ですが、6のカーネリアンのインタリオの指輪も同様に、インタリオはローマ時代のもの、ラテン語を彫った金の指輪として作られたのは中世。おそらく当時の聖職者が封印に押して使ったものでしょう。

アレキサンダー大王のカメオ 考古学リヴァイヴァルのブローチ

7.アレキサンダー大王のカメオ 考古学リヴァイヴァルのブローチ
製作年代:カメオ/紀元前2~1世紀 セッティング/19世紀後半
製作国:ギリシャ


円形のブローチ7は、アレキサンダー大王を彫っています。カメオはローマ時代のもので、大王のアトリビュートである耳の上の角が綺麗に彫られています。しかし、金細工部分は19世紀後半の典型的な考古学主義のデザインと作りです。

カメオというものは、こうして古代のものが何度も作り替えられているだけでなく、近世になると彫る技術も進み、また別の美しさを持つ新しい作品が多く生まれていくのです。

これぞジュエリーの真髄

1.古代の金細工と復元
1-1 古代の驚くべき金細工技術
1-2 19世紀の2人の作り手
2.カメオとインタリオ
2-1 古代のものに命を吹き込む
撮影/栗本 光

『家庭画報』2023年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
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