ピアジェ銀座本店の扉を開けると、そこで待っていたものは……
吹き抜けの高い天井にゴールドカラーのシャンデリア、ゆったりとした踊り場のある階段が“美の殿堂”を思わせる「ピアジェ銀座本店」。銀座に夏の訪れを告げる日差しが降り注いだある日、スタイリストおおさわさんと編集長・鈴木はこの美しいブティックに足を踏み入れました。
その日、入り口を入った左手には、ブランドが誇るアーカイブウォッチの数々(詳細はフォトギャラリーをご覧ください)が展示されていました(時期によって展示内容は替わります)。まずはその素晴らしさに魅入られて、すっかり足が止まってしまったおおさわさん。2人のトークは、ピアジェの創業時の話からスタートします。
ウォッチマニュファクチュールとしてスタートしたブランド、ピアジェ
おおさわ:ご覧になりました?あのアーカイブウォッチ。ものすごい存在感に、いきなり圧倒されました。
鈴木:驚きのお出迎えでしたね。美術館レベルのジュエリーウォッチに、銀座で会えるとは思っていませんでした。
おおさわ:ピアジェは多くのアイコニックなジュエリーを生み出していますが、ブランドのスタートは、ウォッチマニュファクチュールですものね。
鈴木:スイスのジュラ渓谷にある、ラ・コート・オ・フェという村で創業したのが1874年。ピアジェ一族の農場内にある小屋に、工房を構えたのが始まりだったそうです。
おおさわ:それは知りませんでした。渓谷というくらいですから、雪深い場所なんでしょうね。
鈴木:だからこそ、冬の時期、集中して緻密な作業に取り組むことができたのかもしれません。
1945年当時のコート・オ・フェのアトリエ。創業一家のポートレート。“常に革新的であれ”というブランドの精神が名品を生み出す
鈴木:ピアジェのブランドモットーのひとつは、「今までなされてこなかったことをしなさい」だと伺ったことがあるのですが、先ほどのアーカイブは当時、相当に革新的なスタイルだったでしょうね。
おおさわ:今見ても「おおっ!」と声が出るほどですから。でも本当にすごいのは、アーカイブウォッチで使われている様々な技法が、今現在の商品にも応用されていることです。
人の手首にぴったりとフィットするように、円錐台の立体形状になっている1969年に制作されたカフウォッチ。ブレスレット部分には、細かいエングレービング装飾が施され、文字盤にはラピスラズリを採用しています。鈴木:春に登場した「ポセション」の新作は、まさにそれですね。
おおさわ:ポセションはピアジェのアイコンで、ジュエリーのパーツがくるくると回るのがとても楽しいコレクション。一方に回せば楽しかった記憶が甦り、反対に回せば新しい思い出が刻まれていくとか、回しながらお願い事を唱えるといいとか……。撮影で使うと、必ず現場のスタッフの中で話が盛り上がるジュエリーなんです。回るところは記事下の動画でご紹介しますので、ぜひご覧ください。
おおさわさんは、すべてポセションでコーディネート。薬指に重ねたリングは、球状の部分が回転する愛らしいデザイン。指につけるとき、肌の上を心地よくころころと滑ります。人さし指のリングとブレスレットは新作。「ポセション」リング(人さし指)(PG×ダイヤモンド)93万2800円 薬指(上)(PG×ダイヤモンド)68万6400円 (下)(PG×マラカイト×ダイヤモンド)47万800円 「ポセション」ブレスレット(PG×ダイヤモンド)167万2000円 「ポセション」ウォッチ(PG×ダイヤモンド、インターチェンジャブルストラップ、32㎜径)389万4000円 別売ストラップ4万4440円/すべてピアジェ ※リング、ブレスレットはサイズによって価格が変わります。以下同。時計のベルトは付け替え可能。「ポセション」リング(上)(PG×マラカイト×ダイヤモンド)47万800円 同(下)(PG×ダイヤモンド)68万6400円 「ポセション」ウォッチ(PG×ダイヤモンド、インターチェンジャブルストラップ、32㎜径)389万4000円 別売ストラップ4万4440円/すべてピアジェ鈴木:願い事が叶うなんて、まるで“お守りジュエリー”のようですね。
おおさわ:その新作がこの春に登場したのですが、1960年代にピアジェが生み出した「パレス装飾」が施されているのが大きなポイント。これが実にエレガントで、なおかつインパクトがあるんです。
ピアジェのDNAに刻まれた「大胆さ」に惹かれる
鈴木:パレス装飾とは、ゴールドの地金部分にエングレービングで細かく溝を刻み、ファブリックにも似たテクスチャーを与えるテクニックのことですね。
おおさわ:わざとバラバラのランダムな溝が入っています。そうすることで光の入射角、反射角にばらつきが出て、輝きに複雑さが生まれるんです。
鈴木:確かに、つるつるした金属面は強くフラットに光を反射しますが、パレス装飾が施された部分は一種独特な輝き方です。
パレス装飾が施された新作の「ポセション」コレクション。2023年秋にはホワイトゴールドタイプも登場予定。右から「ポセション」ブレスレット(PG×ダイヤモンド)114万4000円 同(PG×ダイヤモンド)167万2000円 「ポセション」リング(PG×ダイヤモンド)93万2800円 同(PG×ダイヤモンド)32万7800円/すべてピアジェおおさわ:ダイヤモンドも爪ではなく、ゴールドの溝で囲って留めています。その名も「ポセション セッティング」。ユニークですよね。
鈴木:私が驚いたのは、ブレスレットのクラスプです。ダイヤモンドをセッティングした部分の裏に、小さなプッシュタイプの留め金があり、着脱がとてもスムーズ。指先で見つけやすくて押しやすい、手首に食い込んだりするようなストレスも一切ありませんでした。
おおさわ:これも職人の技術、まさにサヴォアフェールです。パレス装飾や回転リングはもちろん、使う人のための小さな仕掛けまで、独創性あふれるデザインに私はすごく惹かれるんです。
鈴木:根底に流れているのは「今までなされていなかったことを」というメゾンの精神なのでしょうか。受け継いできた技術を、今の時代に合わせて大胆に革新していく印象です。
まとう人の心地よさを追求した究極のサヴォアフェール
鈴木:クラスプに加えてもうひとつ、「ライムライト ガラ」というウォッチのブレスレット部分にも驚きました。
おおさわ:ミラネーゼブレスレットと呼ばれる、金属をメッシュ状に編んだものですね!
鈴木:なめらか過ぎて、もはやこれは貴金属とは思えない印象です。
3つの異なるピアジェのアイコンをコーディネート。違和感なくスムーズにまとまるのもピアジェならでは。ペンダントは先端部分の長さを自在に変えられるラリエットタイプです。「ピアジェ ローズ」ペンダント(PG×ダイヤモンド)141万6800円 「ライムライト ガラ」ウォッチ(PG×ダイヤモンド、26㎜径)437万8000円 「ポセション」リング(PG×ダイヤモンド)187万4400円/すべてピアジェなめらかなミラネーゼブレスレットは、肌の上で滑るようなつけ心地。「ライムライト ガラ」ウォッチ(PG×ダイヤモンド、26㎜径)437万8000円 「ポセション」リング(PG×ダイヤモンド)187万4400円/ともにピアジェおおさわ:細部に宿るクオリティの高さこそがピアジェの真骨頂ですよね。このブランドのジュエリーや時計は、コーディネートを考えたり重ねづけするのももちろん楽しいのですが、私自身は職人たちのサヴォアフェールが生み出す「大胆さ」と「繊細さ」を装う喜びを堪能したいし、皆さまにも実際に身につけてこの感動を実感してほしいと思います。
鈴木:まさに、一生もののジュエリー&ウォッチをまとう喜びですね。
もうひとつのアイコン。美と喜びのシンボル、ピアジェ ローズ コレクション
鈴木:さて、おおさわさんが惹かれるというその「大胆さ」と「繊細さ」ですが、その礎を作ったのはピアジェの4代目会長、イヴ・ピアジェ氏です。
おおさわ:ピアジェのスタイルを確立し、1960年代から80年代のソサエティたちに絶大なる支持を得てきた方ですよね。芸術にもとても造詣が深いと伺っています。
鈴木:そしてバラをこよなく愛する方でもあります。
おおさわ:「ピアジェ ローズ」コレクションの生みの親ですよね。
イヴ・ピアジェ氏、近影。鈴木:イヴ・ピアジェ氏はバラの振興に尽力され、ジュネーブで開催される国際バラ新品種コンクールの審査員も長年務めていらっしゃるそうなのですが、その功績をたたえて1982年に金賞をとったバラが「イヴ・ピアジェローズ」と名づけられたのだとか。
おおさわ:すごいですね。その品種、日本でも買えるのかしら?
鈴木:園芸店などでオーダーできるそうですから、機会があればぜひ! 80枚もの花びらがついた、大輪のバラなんですよ。
おおさわ:ブランドのアイコンともいうべきピアジェ ローズの背景には、そんな物語があったんですね。
指と指の間にバラの花が咲いたように見えるデザイン。右から「ピアジェ ローズ」リング(PG×ダイヤモンド)80万9600円 同(WG×ダイヤモンド)137万2800円/ともにピアジェバラのモチーフの後ろを押すと、チェーン部分が可動。長さを自由に変えられます。右から「ピアジェ ローズ」ペンダント(WG×ダイヤモンド)150万4800円 同(PG×ダイヤモンド)141万6800円/ともにピアジェおおさわ:素敵な物語をもつだけでなく、ピアジェ ローズには可憐さとともに気品が感じられます。そこがまた大人の心をくすぐりますよね。
鈴木:ブランドが培ってきた美意識があってこそのデザインなのでしょう。
おおさわ:ちなみに、イヴ・ピアジェ氏は御年81歳でまだまだお元気だそうですよ。ブランドの美の体現者として、これからもご活躍いただきたいですね。