山口 遼 女性のためのジュエリーお買い物学・・・ジュエリーを買うために最低限必要な基礎知識を、12回に分けてお届けします。
連載一覧をはこちら>> イギリスの宝石店STREETER & Co. Ltd.が1900年頃に出版した商品カタログ(復刻)。本には実寸サイズでデザインが描かれ、下部に素材と値段が明記されている。Streeter, Edwin W. GEMS.(柏書店松原/2003年出版)第2回 ジュエリーの歴史(近代~現代)
産業革命から
さて前回は、古代からのジュエリーの意味と歴史について簡単にお話ししましたが、今のジュエリーとはいささかほど遠い話になりました。今回は、現在、我々が買ったり使ったりしているジュエリーへと繋がるお話です。19世紀の初め頃から、ジュエリーがどのように作られ、売られ、使われてきたのかを歴史的に詳しく見ていきましょう。たった100年とちょっとの出来事なのですが、ジュエリーにとっても激変の時代といえますよ。
【読み進める前に!】
「第1回 ジュエリーの起源と歴史」をおさらいする
革命がジュエリーにもたらしたもの
これからお話しするのはほとんどが英国での出来事です。1800年頃から蒸気機関の発明、それによる汽車と蒸気船の誕生、織機の自動化など、いわゆる産業革命と呼ばれる社会の変化が生まれます。
その結果、鉄道、船、貿易、保険、銀行、旅行代理店などと言ったこれまでにない業種が生まれます。そこで仕事をするのは貴族ではありません、ほとんどが平民です。産業革命は、普通の人、つまり平民が富裕になるチャンスをもたらしたのです。
ウィリアム・ベル・スコット「鉄と石炭」/提供:National Trust Photo Library/アフロ「成金=ブルジョワジー」のための
新たなジュエリー市場が誕生
この時代に新しく金持ちになった人を成金(ブルジョワジー)といいます。急に大金を持った人たちがすることは、今も昔も変わりません。
妻や子供、愛人たちに、ジュエリーを買うこともその一つでした。彼らの需要に合わせるように、それまで王侯貴族が使っていたジュエリーとはデザインも性質も異なる、新しいジュエリーのジャンルが生まれたのです。
年代でいえば1840年前後、ちょうど英国でヴィクトリア女王が即位し英国の全盛期が始まる頃に、新しいジュエリーの市場も盛り上がりを見せます。