幻想的な世界が広がるモダンなコレクション
さまざまな素材を駆使し、オープンワークで軽やかさを実現。清らかな色合いにも研ぎ澄まされた美意識が。「ヴィヴラスィヨン ミネラル」ネックレス(YG×Pt×あこや真珠×ダイヤモンド×ラッカー×MOP)1772万5000円 同イヤリング(YG×Pt×真珠×ダイヤモンド×ラッカー×MOP)651万7500円 同リング(YG×Pt×ブルートルマリン29.26ct×ダイヤモンド×ラッカー×MOP)3975万円(すべて参考価格)/すべてシャネル ●お問い合わせ/シャネル カスタマーケア TEL:0120-525-519シノワズリの表現に愛着と伝統が宿る
解説/山口 遼(宝石史研究家)
「シャネル」の創業者であるマドモアゼル シャネルの伝記を読まれた方なら見たことがあると思いますが、度々移り住んだ彼女の自宅には、必ず中国風の屛風が複数枚飾られています。
中国で作られ、インド東部のコラマンダル海岸を経由して西欧にもたらされた文物の中に、繊細な漆細工に真珠貝や翡翠、金細工などを加えた折り畳める屛風がありました。
彼女はかつてこう述べています。「私はカタツムリのようなものね、自分の家を持ち歩いているの。中国の屛風と本はどこにでも持って行くわ。他のものはさておき、屛風は欠かせない」と。
今回のジュエリーは、彼女が愛した屛風に描かれた東洋風の風景をモチーフとしたもの。
様式でいえば典型的なシノワズリの作品です。波を金線で描き、その上に白蝶貝で雲を、ブルーと薄緑色のラッカーで山を、ダイヤモンドで木々を表したパーツを、真珠と組み合わせています。全体に非常に淡白な色使いで、シャネルとしては珍しいものです。
シノワズリというデザインは、マドモアゼル シャネルがジュエリーを作り始めた頃には、日本風のジャポニスムとともにヨーロッパでも浸透していました。東洋の文化には偏愛ともいうべき深い愛着を示し、彼女の過ごしたアパルトマンにもその影響が見てとれます。
創業者の嗜好を引き継いだこのデザインは、日本の女性にはぴったりな感覚の名作だと思います。
表示価格はすべて税抜きです。
撮影/栗本 光
『家庭画報』2020年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。