香川漆芸としての魅力を探る
山下義人/YOSHITO YAMASHITA1951年香川県生まれ。香川県立高松工芸高等学校漆芸科卒業後、人間国宝の磯井正美と田口善国に師事。2007年紫綬褒章受章。13年重要無形文化財「蒟醤」保持者(人間国宝)認定。創作活動の傍ら、後進の育成に力を注ぐ。高度な彫りと色彩の豊かさ。香川漆芸が誇るこの2つの特徴を支えるのが、三技法と呼ばれる「蒟醤」(漆を塗り重ねて文様を彫り、その溝に色漆を埋めてから表面を研いで文様を表現)、「存清(ぞんせい)」(漆を塗り重ねた作品に色漆で文様を描く)、「彫漆(ちょうしつ)」(各種の色漆を通常数十回から数百回塗り重ね、その色漆の層を彫り下げることで文様を浮き彫りにする)。
今回の2作品の見どころにもなっています。
木工轆轤(ろくろ)を巧みに操り、プレートの高台部分を微調整する山下亨人さん。同じ工房で仕事をする父親の山下義人さんとともに何度も手で触って確認し、「最も心地よい手触り」を追求したという。「髙田さんのデザインが大変細やかだったので、漆芸の技で表現するのは容易ではありませんでした。でも、せっかくなので、重箱の菊には彫漆、プレートの菊には存清と、異なる技法を用いて制作しました」と山下さん。
白漆で描いた菊の輪郭線に、蒔絵の技法で金彩を施す山下義人さん。この道40年以上の漆芸家が作業に集中する姿から気迫が伝わる。実際に重箱の加飾を担当したのは、彫漆を用いた作品で多くの賞を受賞している石原雅員(まさかず)さん。
「二段の菊がつながるところを彫るのに苦労しました。白一色でレリーフ調に仕上げることで、彫漆の魅力を伝えられたと思います」
今回の2作品を手がけた香川漆芸作家の石原雅員さん、山下亨人(こうじん)さん、藪内江美さん。左端は作品制作用の図面を起こした出渕(いでぶち)光一さん。山下さんがもう一つこだわったのが、香川漆芸の特色の一つである色漆を使うこと。そして、髙田さんの世界観を尊重して選んだのが、上品な白漆でした。
「色漆は漆と顔料を練り合わせて作ったもの。時間とともに漆は透明に近づき、顔料の色が出てきます。今はややくすんで見える白漆も、しばらくすると本来の美しい白になりますよ」
重箱に彫漆の白漆を塗り重ねる作業中、きめの細かい砥石で水研ぎ(塗面を滑らかにするために水をつけながら研磨すること)をする山下亨人さん。こうした地道な作業を丁寧に積み重ねることで、美しい作品が生まれる。彫漆の工程の1つで、丸い彫刻刀で菊の模様を彫る石原さん。髙田賢三さんと香川漆芸の最初で最後のコラボレーション作品。髙田さんがご存命であれば、きっと笑顔でその完成を讃えたことでしょう。
Information
「夢」漆重箱、漆プレートの2作品を販売いたします
「夢」漆重箱
髙田賢三さんデザイン、人間国宝・山下義人さん監修。彫漆と金蒔絵の技法を使用した黒漆の二段重。(幅18.18×奥行き18.18×高さ11.514cm/6寸×6寸×3寸8分)60万円(送料別)専用桐箱入り。数量限定の受注生産品。 「夢」漆プレート4枚セット
髙田賢三さんデザイン、人間国宝・山下義人さん監修。存清と金蒔絵の技法を使用した黒漆のプレート。サイズも柄も異なる4枚組。(直径特大60、大40、中32、小24cm各1枚)145万円(送料別)専用桐箱入り。数量限定の受注生産品。 制作者と協力者の名は直筆で蓋に、髙田賢三さんのサインは各作品の裏に記されている。
申し込み方法
「重箱」「プレート4枚セット」は合計で最多15個までの受注生産となります。お届け日に関しましては、お申し込み時にお知らせいたします。購入ご希望のかたは、下記へご連絡をお願いします。 ●お電話:家庭画報事務局 03(3262)5851 (土曜・日曜・祝日を除く10時~17時 在宅勤務により、お電話が繋がらない場合がございます。その際はメールでのお問い合わせ、または留守番電話にメッセージをおねがいいたします。) ●Web:https://id.kateigaho.com/user/inquiry/ ※ご購入は先着順となります。 ※製品不良があった場合以外、購入のキャンセルや返品はできません。
撮影/鍋島徳恭、福家大介、只安 渉(制作工程及び人物写真) 文/清水千佳子 スタイリング/横瀬多美保 料理製作/久保香菜子 協力/鈴木三月
『家庭画報』2021年4月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。