3.Act.2 Scene1「Fascination-魅惑-」
柚希礼音さん
そして後半のScene1「Fascination-魅惑-」の舞台、光り輝く摩天楼で黒燕尾服の紳士たちを従え、魅惑のダンスを繰り広げたのは柚希礼音さん。まさに元宝塚トップスターの面目躍如! まさか氷上の舞台で、宝塚レビューの薫りを感じることができるとは思ってもいませんでした。退団以降、初となる黒燕尾服姿で魅せる気合の入ったダンスナンバーの数々に、宝塚時代からのファンの皆さんは胸熱だったのではないでしょうか。
今作では、柚希礼音さんの見せ場がパワーアップ!第一幕の登場シーンでの空中パフォーマンスも実に見事でした。ただ座っているだけでも相当怖いはずの上空で、次々に繰り出されるエアリアルヨガ。いえ、ヨガというには高すぎます(苦笑)。抜群の身体能力とスタイル、そしてプロ根性にトップスターの気概を見ました。写真/LUXE4.Act.2 Scene4の「Carnaval-祝祭-」
荒川静香さん
メキシコ、ベラクルスのカーニバルやエンセナーダのカーニバル、またはリオのカーニバルをモチーフにしているのでしょうか。氷上から届けられたサンバのリズムの熱いこと! 気がつけば、思わずリズムに乗ってステップを踏んでいたほど。会場全体の一体感を味わえました。
この場面の立役者として挙げたいのは荒川静香さん。前半に見せた“食虫花”のインパクトも大でしたが、カーニバルシーンでも抜群のスタイルとキレのいいダンスで、サンバチームを率いていました。毎回、違う引き出しを見せて、観客を楽しませてくれるのは髙橋選手の十八番とするところですが、荒川さんも負けていませんね。
5.Act.2 Scene5「Phénix-不死鳥-」
髙橋大輔選手
最初のひと滑りで空気を変える力はますますパワーアップしていました。髙橋選手のソロスケーティングで構成された後半Scene5「Phénix-不死鳥-」。サンバの華やかな喧騒があっという間に塗り替えられ、縦横無尽に氷上を滑っていく心地よい音が耳に響きます。
「スケートスキルは氷艶を始めた6年前より、かなりアップしていると思う」と語っていましたが、なめらかさを増したスケーティングとパフォーマンスはさらに覚醒し、まるで氷と戯れているかのよう。やはり独自の境地に達しているスケーターです。
いまやアイスダンサー・髙橋大輔として、村元哉中選手とともに物語性のある演技で楽しませてくれていますが、久しぶりに披露したソロスケーティングもやはり魅惑的でした。
前2作がストーリー性で展開した作品とするならば、今作のレビューショーでは壮大なスケールのもと、シーンを変えて次々に繰り出される圧巻のパフォーマンスに引き込まれました。かつて愛した風景、いつの日か訪れたい憧れの地……。夢か現(うつつ)か、はたまた蜃気楼か。世界各地を垣間見た気分になれた、幻想的なひとときでした。
振り返りで、「LUXE」の世界へ再びいざなわれたところで、明日6月30日配信予定の後編では髙橋大輔選手からのコメントをお届けいたします。お楽しみに!
フォトギャラリーを見る 小松庸子/Yoko Komatsu
フリー編集者・ライター
世界文化社在籍時は「家庭画報」読み物&特別テーマ班副編集長としてフィギュアスケート特集などを担当。フリー転身後もフィギュアスケートや将棋、俳優、体操などのジャンルで、人物アプローチの特集を企画、取材している。
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