東 篤志 スポーツメンタルコーチに聞く
「野口選手の強さ、スポーツクライミングの魅力、スポーツの力」
東京2020の代表内定を決めた大会にも同行し、野口選手を見守っていた東コーチ。東 篤志さんは、スポーツクライミング、野球、サッカー、体操、陸上、卓球など、さまざまな競技のトップアスリートを、メンタルとフィジカルの両面からサポートしています。
「野口選手については現在、メンタルコーチとしてかかわっています。野口選手の『自分会議』、つまり自分自身と向き合って、より深く、さまざまな角度から考えることをサポートするのが主な役割です。大会に同行することもあります」。
20年以上もトップ選手として世界で戦い続ける野口選手の強さの秘密を尋ねると、「いろいろありますが、一番は、大会本番でも練習中でも、自分を俯瞰して、『今この場面で何ができるか』を的確に判断して実行できるところだと思います。
スイッチのオンオフのうまさも強み。普段はおっとりした猫のようですが、戦闘モードに入ると、まるで虎(笑)。ずっと大きなプレッシャーのなかで戦ってきたので、オリンピックの代表に内定したときは、僕も本当に嬉しかったです」。
数々のスポーツクライミングの大会を見てきた東さんが、特に面白いと話すのが、ボルダリング。高さ4メートル程度の壁に用意された複数の課題(コース)を4分以内にいくつ登れるかを競う種目です。
「難しい壁ばかりで、さまざまな体の使い方とともに、発想力やクリエイティビティも必要。限られた時間で、いかに戦略を立てて登るかという頭脳戦の面も大きく、見ごたえがあります」。
アスリートを通じて多くのスポーツとかかわる東さんが考える「スポーツの力」とは?
「本気で取り組むことで、真の意味での自己成長ができます。真剣に打ち込めば、必ず壁にぶつかり、葛藤し、自分と深く向き合うことになりますから」。
最後に野口選手へのエールをお願いすると、「自分を信じて、自分らしさを貫けば大丈夫!」と力強い言葉が返ってきました。
東 篤志(ひがし・あつし)1982年神奈川県生まれ。スポーツメンタルコーチ、メディカルコンディショニングトレーナー。日本体育大学卒業後、柔道整復師の資格を取得。整形外科リハビリ科、整骨院に勤務後、独立。東京と神奈川で整骨院とジムを6店経営。 〔特集〕すべてを糧に未来を信じて 届け!スポーツの力
取材・文/清水千佳子 構成/小松庸子
『家庭画報』2021年8月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。