現代フランスを代表する、鬼才アンジェラン・プレルジョカージュ振付の『ル・パルク』。「クラシックバレエにはない動きにチャレンジできるコンテンポラリー作品も、踊っていてすごくおもしろいです」。踊りたいものは、すべてこのメゾンの中にある
日本人の母とニュージーランド人の父を持ち、オーストラリアのバレエ学校を卒業して、2011年にシーズン契約でパリ・オペラ座に入団。
団員の95パーセントは付属バレエ学校出身という、「外部からの」ダンサーにとってはあまりにも狭き門であるにもかかわらず、八菜さんは2013年みごと正団員となり、そこからたった3年で、プルミエール・ダンスーズまで駆け上がります。
「最初はとんとん拍子でした。でもプルミエまで上がったとたん、進むペースが変わってしまった。仲間たちはエトワールになっていくのに、私は同じ場所で足踏みしているようで。どうして? 私は何をして、何をしていないから、進めなくなってしまったの?......もう、自分がどう踊りたいのかも、わからなくなってしまいました」
ヌレエフ版『ドン・キホーテ』で街の踊り子役を踊る八菜さん。2022年元日には「念願のひとつだった」という主役のキトリを好演した。撮影/Svetlana Lobofエトワール。フランス語で「星」を意味するその称号は、オペラ座総裁と舞踊監督が決定・任命する特別な地位。それは時として、努力や実力ではどうにもならない何かにも左右される、酷な一面を孕んでいます。しかし八菜さんにはもう、迷いはありません。
「2019年末にオペラ座で起こった大規模ストライキの後、久しぶりに舞台に立ってこう思ったんです。『私はこのまま踊っていけばいい。これが私のやりたいことなんだ』って。もちろん、エトワールになりたいという強い気持ちは変わりません。でも、正しく鍛錬していけば、私は踊りを辞めるその日まで、絶対に進化していけるから」
幼い日に映像で観たパリ・オペラ座バレエ団。その時に抱いた憧れは、今も変わりません。
「私が踊りたいものは、すべてこのメゾンの中にある。だから私は私なりのやり方で、自分の道を作っていきたいと思います」
取材・文/阿部さや子
『家庭画報』2022年3月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。