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新しい音楽の形を探る。指揮者・佐渡裕とピアニスト・反田恭平が語る音楽の明日

2022.05.11

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音楽の贈り物 第1回(全3回) 2023年4月、東京・墨田区のすみだトリフォニーホールを拠点とする新日本フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任する指揮者の佐渡 裕さん。そしてショパン国際ピアノコンクール第2位入賞で日本中を沸かせ、自らのオーケストラも率いるピアニストの反田恭平さん。今注目のお二人に、新たなステップへの意気込みと音楽が開く未来の可能性について語っていただきました。

佐渡 裕(指揮者)と反田恭平(ピアニスト)が語る
音楽の明日


佐渡さんと反田さん

すみだトリフォニーホールで2022年1月に行われた佐渡さんの指揮による新日本フィルの演奏会は、コロナの入国規制で来日できなくなった外国人ピアニストの代演で反田さんが出演。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」での共演は万雷の拍手を浴びた。演奏会終了後、聴衆の熱気の残る会場で行われた。(佐渡さん)衣装協力/Utsubo Stock (反田さん)スーツ/デ ペトリロ シャツ/ギ ローバー タイ/ニッキー(すべてシップス 渋谷店) チーフ/フラテッリ ルイージ 靴/トゥールズ&コンストラクション(ともにユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)


右/佐渡 裕(さど・ゆたか)
1961年、京都市生まれ。レナード・バーンスタイン、小澤征爾に師事。1989年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝。以後、世界各地のオーケストラに客演。現在はトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督としてウィーンを拠点に活動。国内では兵庫県立芸術文化センター音楽監督、シエナ・ウインド・オーケストラ首席指揮者。2023年4月に新日本フィルの音楽監督に就任する。

左/反田恭平(そりた・きょうへい)
1994年、札幌市生まれ。高校在学中、日本音楽コンクールに史上最年少で優勝。モスクワ音楽院を経て、現在ショパン国立音楽大学研究科に在籍。同世代の音楽家を集めたジャパン・ナショナル・オーケストラを創設し、自らが社長を務め、奈良を拠点に活動。2021年ショパン国際ピアノコンクールで第2位入賞。最もチケットの取れないピアニストとしても知られる。

地域と結びついた新しい音楽の形を探る


佐渡 新日本フィルの音楽監督就任に先駆けて、今回超満員のお客さんを迎えて新しいスタートを切ることができました。反田君には多忙ななか代役を引き受けてくれて本当に感謝しています。オーケストラが成長する一番の要因は、やはり大勢のお客さんに拍手してもらうこと。それを受けてオーケストラもますますよい演奏をする。そんな相乗効果で今日は最高のベートーヴェンだったと思います。

反田 そうですね。「皇帝」を弾くのは僕は5年ぶりでした。でも、コンチェルトは大好きなジャンルなので、2021年12月に代演のお話をいただいたときは、佐渡さんとまたご一緒できるということで、忙しさよりも弾きたい気持ちのほうが大きかったですね。ただ、2022年1月から新しいプログラムが重なっていたので、正直いうと勉強する時間を捻出するのが大変でした。コンクールで賞を取ったら忙しくなるのは当たり前ですが、自分の心と体をコントロールしながらトライしていくというのはすごく勉強になりました。

佐渡 コンクールで注目を集め、結果的に反田君のジャパン・ナショナル・オーケストラのことを国内外の人に知ってもらえたのは、大きな成果だね。オーケストラの本拠地として奈良という場所を選んだのはスポンサーとの関係?

反田 そうです。でも、もともと僕の中の場所の候補の3か条として、日本の文化や歴史があり、空気がきれいで、そして海外の人が「日本といえば○○」とイメージできる土地っていうのがあったので、奈良はそれにもってこいというのもありました。あえて東京や大阪ではなく、ゼロから街の人すべてを巻き込んでやりたいなと思ったんです。奈良はまだコンサートがそれほど盛んな街ではないのですが、ピアノの保有率は全国でナンバーワンなんですよ。

リハーサル風景

リハーサル風景

〔音楽での会話の中に込められた互いの敬意と信頼〕すみだトリフォニーホールでのリハーサル風景。2017年の東京シティ・フィルの全国ツアーで初共演して以来、「自分の素を見せられる相談相手」(反田さん)、「自分も刺激を受ける、尊敬できる青年」(佐渡さん)と、音楽を介してのつきあいが続いている。反田さんはショパンコンクール入賞後、すぐにウィーンの佐渡さんに直接報告に行き、佐渡さんは「自慢の息子」の入賞を祝った。

街とホールと一緒にオーケストラの社会的価値を発揮する


佐渡 今回初めて東京のオーケストラのタイトルを引き受けたけれど、墨田区とトリフォニーホールと新日本フィル、この3者が組むというのはすごく重要だと思っている。オーケストラが音楽の力で街と一緒に喜びや悲しみを共有したり、あるいは子どもたちの教育の場となったり、こういうことが具体的に機能してきたら、真に日本を代表する世界的オーケストラになっていくのではないかなと。

何十年も応援し続けてくれているファンを大事にしつつ、オーケストラの社会的な価値というものにメンバー自身がもっと気づいて、それをどんどん発揮させるのが僕の役目だと思っています。先日もホールの近所のかたがリハーサルで初めてオーケストラを聴いて「すごいものを見せてもらった。オーケストラってこんなにすごい迫力なんですね!」って大興奮されていて。つまりオーケストラをまだ知らない人は我々の近くにたくさんいる。音楽がもたらす豊かなものの考え方とか、身震いするような感動をメンバーと一緒にもっと発信し、伝えていきたい。
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