ダビンチは3つの機械からなり、その1つが松岡さんの右にある4本のアームを持つロボット。井坂先生は別の機械を通してアームについている鉗子やカメラを遠隔操作し、子宮がんなどの手術を行います。初めは蹴とばしていた? ダビンチとの出会い
松岡 恩師とまでおっしゃるダビンチを、最初にご覧になったときはどう思われましたか?
井坂 初めは蹴とばしてました。
松岡 蹴とばしてた?
井坂 大学病院に置いてあったのですが、大きいので邪魔なんですよ。ロボットを使っても、あまりうまくいくとも思えませんでしたし。
松岡 何がきっかけで使うようになったのですか?
井坂 前立腺がんの手術で先に使用された泌尿器科の先生からすすめられたんです。使ってみたら素晴らしくて、世界が変わりました。
松岡 どんなふうに変わったのか、教えていただけますか?
井坂 医師の立場でいうと、短期間で技術を修得できるのが大きいです。細い鉗子を操る腹腔鏡手術は難しく、最低でも1年は訓練しないとできません。ダビンチの場合、医師は両手の2本の指に装着したセンサーを通じて、ロボットのアームの先につけた鉗子を動かすのですが、驚くことに、自分の手が鉗子そのものになったような感覚でできるのです。ですから、早ければ1か月くらいで覚えられます。
松岡 手のように動かせるんですか。
井坂 ええ。ですから、繊細な処置もそれほど難しくありません。あと、ダビンチのカメラだと細部まで大変よく見えるので、解剖学的な部分が前よりわかるようになりました。
「最先端のロボットを使うことで、みんなが幸せになるんですね」──松岡さん
松岡 患者さんにとっての利点にはどんなものがありますか?
井坂 大きく切開しないため、体への負担も痛みも少なく、回復が早いことですね。入院期間も短くてすみます。
松岡 先生のお話を伺っていると、手術は全部ダビンチにしたらいいように思えてきます。
井坂 海外に比べると日本は遅れていますが、保険適用になった術式のほとんどはダビンチにシフトしています。競合するロボットも増えてきましたし、ロボット手術はこれからどんどん増えていきますよ。