〔注目の人〕生田斗真・磯村勇斗
心の渇きにもがいて本当の自分を取り戻す物語
〔生田さん〕ジャケット2万8000円 パンツ2万8000円/ともにsemoh(Bureau Ueyama inc.)シャツ3万5000円/SISEある場面で口にしたヘビイチゴの苦みと酸っぱい後味がする映画になりました ── 生田斗真
心が渇いている人たちにも最後は光を見いだしてもらえると思います ── 磯村勇斗映画『渇水』の主役、市の水道局職員・岩切俊作を演じた生田斗真さんについて、本作をプロデュースした映画監督・白石和彌さんは「他には考えられなかった」と語っている。
それほどまでに生田さんが適役だとされた岩切は、同僚・木田拓次を演じた磯村勇斗さんとともに水道料金を滞納した家庭を訪問し、ライフラインである水道を止める「停水執行」という業務に就いている。困難な社会問題を通して色濃く描かれた人間ドラマは、どんな撮影現場から生まれたのだろうか。
「『渇水』というタイトルですが、実は撮影中は雨が降っていることが多かったんです。“今日は撮れるかな?”といいながら雨宿りする待ち時間が結構ありました。でもチームとしては、内容とは打って変わって明るい現場でした。髙橋正弥監督は初めてお会いしたときから作品に対する思いを熱弁されていて“映画人”として信頼できて一緒に“旅”に出たいと思わせてくれるかたでした。今回は全編をフィルムカメラで撮っていて、僕としても久しぶりだったので、映画の中にいるという感覚がすごくありました」と生田さん。
「生田さんはお兄さんのように優しく接してくださいました。おっしゃる通り天候に左右されて雨が止んだ合間を狙って撮影をしたんですが、生田さんは笑顔で“晴れるのを待ちましょう”と話されていたことに懐の深さを感じて、素敵だなと思っていました。髙橋監督は本当に穏やかで、皆が平等に意見を出して創っていくことを大切にしていらっしゃったので、信頼できると思いました」と和やかな雰囲気で映画づくりが行われていたことを磯村さんの言葉が伝えてくれる。
30年前に今にも通じるテーマで書かれた小説をもとに映画化されたことについて、それぞれの考えも伺った。
「いつの時代も“潤い”と真逆の境遇に置かれている人は必ずいます。空気も水も、本来はタダなのに、なぜそれが原因で締めつけられる人がいなければならないんだろうという思いに駆られます。30年前に書かれた小説であることをあまり感じることはなく、普遍性のあるテーマだと思います」という生田さんに続き、「何も変わらないんだなと思います。コロナ禍を経て、このタイミングで『渇水』を創ることにゴーサインを出したことに、制作陣が時代を捉えていると感じました。本当に“今”だと思います」と磯村さんも共感を示した。