〔注目の人〕岡田将生
敬愛する映画監督との待望の作品創り
眉目秀麗なだけでなく、優れた演技力であらゆる役を体現し、アカデミー賞受賞作への出演をはじめ、俳優として最前線を歩み続けてきた岡田将生さん。
今回公開される映画『1秒先の彼』への出演の決め手となったのは、岡田さんがまだ16歳の頃に出演した映画『天然コケッコー』で現場をともにした山下敦弘監督からのオファーだった。
「山下監督と出会い、“映画”というものを教えていただいたので、ご一緒することに特別な思いがあります。今回のお仕事に僕を呼んでいただけたことは何よりも嬉しかったですし、少し怖かったという思いもありました。“新しい出会い”といいますか、大人になってから改めて山下監督と映画という現場で向き合う時間には、またほかの現場とは違う何かが得られるであろうという気持ちでお返事させていただきました。
「岡田、どう思う?」普通だけど、監督のこの言葉が僕には何よりも嬉しいんです──岡田将生
現場で監督から“岡田、どう思う?”って聞かれるのが、何よりも嬉しいんです。高校生時代のお仕事では、そんな問いにも答えることができない状態でしたが、自分の意見を伝えて監督の些細な言葉や考え深い意見とすり合わせて“ハジメくん”というキャラクターを創っていく作業が、当たり前のことなのに、僕には輝いて見えました。自分の中でも山下監督が特別な存在だということを現場で改めて認識しました」
ご自身にとって待望の現場だったのに、なぜ“怖さ”を感じたのか?
「監督は何もできなかった若かった頃の僕を知っているかただからですね。『天然コケッコー』は僕にとって忘れられない作品です。嬉しい気持ちと怖い気持ちが同居していて、現状の姿を見せるのはこの作品なのか、この役なのか、自分自身に問いかけました。10年くらいの間、いつかは山下監督とご一緒したいと思っていたので、お話をいただいてからずいぶん考えた末、絶対に面白くできると思えたのでお受けしました。
そして、実際に現場に入ると、すべてが違いました。監督は作品に対しても、俳優に対しても向き合い方がやっぱり違う。監督には答えを出さない瞬間があって、それが僕はすごく好きなんです。俳優としては答えが欲しいんですが“一回、こうやってみようよ”とか“今やってみてどうだった?”とか問いかけをして試行錯誤しながら創っている感覚を共有できている気がします。カメラの横で台本で顔を隠しながら覗き見しているのは監督独自のスタイルだと気づきました(笑)。10年越しにその姿を見て、なんともいいがたい居心地のいい現場だと思いました」