〔特集〕グランメゾン 美の競演
コスチュームジュエリー〈小瀧コレクションより〉
1910年代にフランスでオートクチュール用のジュエリーとして誕生したコスチュームジュエリーは“素材からの解放”が生んだアクセサリー。貴金属や宝石ではなく、ガラスやメタルなど身近な素材で制作されているのが特徴です。
シャネル、スキャパレッリ、ディオールら「美の変革者」が、自由な発想と独創的なデザインを競って生み出した作品は、今なお気品のある輝きを時を超えて放っています。
世界屈指のコレクションからほんの一部をご紹介します。
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美の変革者たち──オートクチュールのコスチュームジュエリー
オートクチュールのためのコスチュームジュエリーは、デザインされた生地の種類や色を考慮し、コレクションのテーマを強調しなければなりません。そうした課題を、素材を自由に選択し独創的なデザインを生み出すことで、美の変革者たちは軽やかに装飾品の既成概念を超えてみせました。
1926年に有名なリトル・ブラック・ドレスを発表したシャネルは、その革新的なドレスに合わせて模造真珠のネックレスを何連にも重ね付けさせました。強烈な色彩感覚をたずさえたスキャパレッリは、1927年のデビューコレクションでブラウンとべージュ、黒と白などのシックな2色使いのスタイリッシュなセーターを発表。同時に発表されたコスチュームジュエリーは、シュールレアリスムの影響を受けた意表を突くデザインでした。
先駆者ポール・ポワレから始まったコスチュームジュエリーはここに開花し、シャネルとスキャパレッリはお互いを強く意識しながら、激動の1930年代を駆け抜けます。競い合うように、バレンシアガ、ディオール、ジャック・ファット、ジバンシィ、イヴ・サンローランたちも、それぞれが新しいコレクションに挑み、アイコニックな夢のジュエリーの世界を創り出していったのです。
CHANEL(シャネル)
ネックレス“花”モチーフ(パート・ド・ヴェール・エナメルガラス、メタルほか)
流行は移り変わるが、スタイルは永遠── Gabrielle Chanelガブリエル(ココ)・シャネルがコスチュームジュエリーの制作を始めたのは1920年代。それまでの伝統を打ち破るような斬新なデザインを数多く発表した。シャネルのコスチュームジュエリーは、女性の社会進出が進む当時の世相と相まって絶大な支持を得る。
ラリエット、イヤリング“松かさ”モチーフ(パート・ド・ヴェール・エナメル ガラスほか)
ネックレス(ガラスビーズ、模造パールほか)。
ネックレス、イヤリング(パート・ド・ヴェール・エナメルガラスほか)。
クロスペンダント(ロック・クリスタル、メタル)。
Schiaparelli(スキャパレッリ)
ボッティチェッリの美しさにインスピレーションを受けた自然主義的なモチーフの「パガン・コレクション」より、ネックレス“葉”(クリアエナメル彩メタル、メタルメッシュ)。
私にとってファッションデザインとはアートである── Elsa Schiaparelli1920年代から1940年代、エルザ・スキャパレッリは、軍靴の響きがこだまする不穏な時代に光を射すような幻想的で明るい色彩に満ちたデザインを生み出した。
【先駆者】Paul Poiret(ポール・ポワレ)
夜会用マスク、ブレスレット“深海”(メタリックチュールにガラスビーズとクリスタルガラスで刺繡)。
コルセットをやめ、ゆったりしたラインのドレスを作るなど、ポワレがファッション史上に残した足跡は絶大だ。自らがデザインしたドレスにマッチするアクセサリーが必要だと考え、コスチュームジュエリーを制作したのが1912年頃。まさに先駆者なのである。
DIOR(クリスチャン・ディオール)
ネックレス、イヤリング(ラインストーンほか)
幸せはあらゆる美しさの秘訣である── Christian Dior今日でも「ニュー・ルック」という通称で知られるフェミニンで優美なスタイルを確立し、ドレスに合わせたジュエリーの制作も始めたディオール。ダイヤモンドのような輝きを持つラインストーンと様々な素材を組み合わせたデザインを発表し成功を収めた。
上写真の全景
イヤリング、ブローチ“コルヌコピア”モチーフ(模造パール、ラインストーンほか)
ブローチ“白鳥”モチーフ(ラインストーンほか)。
ネックレス(ラインストーン、クリスタルガラスほか)。
『コスチュームジュエリー』好評発売中
ISBN978-4-418-23215-4 定価:本体2,700円+税 世界文化社刊
世界有数の小瀧コレクションを中心に、400点以上の優品を548点の写真で魅力的に紹介した入門書にして決定版。シャネル、スキャパレッリ、ディオールなど美の変革者たちが生み出したコスチュームジュエリーの精華をはじめ、メゾン・グリポワなど卓越した工房が手がけたヨーロッパのコスチュームジュエリー、ミリアム・ハスケルやトリファリほかアメリカの名品までをも収載したかつてない一冊。用語解説付き。
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Amazonのページへ>>コスチュームジュエリー展
パナソニック汐留美術館(〜2023年12月17日)を皮切りに全国5会場で、紹介書籍と連動した展覧会が順次開催されます。シャネル、スキャパレッリ、ディオールなど小瀧コレクションの名品を中心に、400点以上のコスチュームジュエリーを間近に見ることができるまたとない機会です。全国の巡回会場の詳細は以下をご参照ください。URL:
https://curators.jp/exhibitionlist/095/・特集「グランメゾン 美の競演 コスチュームジュエリー」の記事一覧はこちら>>