〔特集〕わが家がリゾートになる 最旬の「豪邸」拝見 住まいで最も重要なこと ── それは家族が、幸せな気分で過ごせ、心からリラックスできること。オープンエア空間をうまく取り入れ、居ながらにしてリゾート気分が味わえる豊かな豪邸ライフを訪ねました。
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都市の楽園(オアシス)。緑溢れる屋上テラス
── N邸(東京)
都心を忘れさせる緑の生け垣各階に野外空間を設けたN邸。屋上から眺めると、コニファーに囲まれた階下のテラスは森のよう。常緑樹の生け垣は目隠しや境界線としての役割も果たしながら植栽の連なりによって美しい景観をつくり出し、安息感を高めてくれる。
緑と光を感じる都心のリビング
床面を下げた高天井の2階リビング。2面の大開口の向こうには青々とした針葉樹が生い茂る。「葉にあたる光で一日の時間の流れがわかります」とNさん。床に敷いたイタリア製の石材タイルにも緑の影がほのかに映り込む。
坂倉建築研究所
坂倉竹之助、大木健逸、北山 修
前身は、ル・コルビュジエの弟子で日本のモダニズム建築の第一人者である坂倉準三が1940年に創設した坂倉準三建築研究所。その伝統を受け継ぎ、都市施設から個人住宅まで幅広く手がける。
パティオ、テラス、屋上……外とのつながりを大事にした暮らし
窓の向こうに見えるのは日差しを受けて輝く背の高い樹木だけ。都内有数の住宅街に建つN邸の情景です。
現在の住まいをつくる際、Nさんご夫妻が希望したのは、緑に囲まれた暮らしでした。
Nさんいわく「これまで住んだ家も、周りには緑がたくさんあったので、新居にもできるだけ背の高い針葉樹をたくさん植えて窓から眺めたいと思いました」。
日あたりのよい3階テラス。高さ2メートルほどに育ったコニファーは外部からの目隠し効果のほか、防音・防風効果も期待できる。
この要望を受けて設計を担当した坂倉建築研究所の北山 修さんは、「建物の工事が終わったあとで高木を植えようとしても運び込む方法がないので、植えるなら建物が建ち上がる前。そのため基礎工事が終わった段階で、Nさんのお好きなヒマラヤスギ、ブルーアイス、ドイツトウヒといった樹高8メートルほどの針葉樹を10本以上、敷地に植えました」と話します。
建物完成から約2年が経過した今、それらの植物がさらに生長し、2階の窓を覆うまでになったのです。
「幸運だったのは隣地にも背の高い樹木があったこと。おかげで敷地内の樹木と合わせて、奥行きのある緑の情景が楽しめます」とNさん。
さらにN邸では、各フロアに設けた野外空間を取り囲むように、鉢植えの常緑樹を配置。自動灌水によってすくすくと生長した植物は、ここでもご夫妻のプライバシーを保つために役立っています。
掃き出し窓を介してパティオまでフラットにつながる朝食室。左右の壁面に設置した造作棚には、日常使っている和洋食器が収められている。
「特に、朝食室のそばに設けた2階のパティオで休日の午前中、愛犬と過ごす時間は心地よいものです。向きも北東なので穏やかな日差しが楽しめますから」。
朝食室の先にある2階のパティオは、ご主人と愛犬のお気に入りの場所。近隣からの視線をカットするために設置した天井ルーバーがパティオのデザイン性をより高め、防犯面でも効果を発揮。
パティオの天井ルーバー越しに3階テラスの緑を眺めることができ、さらに3階テラスからは屋上の花と緑を楽しむことができるN邸。
植物のつながりを工夫した住まいが、野外で過ごす時間に豊かな潤いをもたらしてくれます。
白い空間にイギリス製のダイニングセットを配置したファミリーダイニング。室内はどの部屋もダウンライトを控えめに設置。そのため、視線は窓の外の緑へと自然に向かう。
1階はギャラリー。長年受け継がれてきた大灯籠や道祖神なども緑の中にしっくりと調和している。
(次回へ続く。
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