連載「12か月のフラワーリース」 世田谷区にアトリエを構える「宙花(そらはな)」のフローリスト戸部秀介さんが作る、季節のフラワーリースを毎月紹介します。空間を華やかに彩ってくれるフラワーリースと共に、花のある暮らしを始めましょう。
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12月のリース「お正月飾り」
木のつるで編んだリースベース(直径約20cm)にヒカゲノカズラとナンテンをワイヤーでとめたシンプルなリースです。ナンテンの赤い実を右下から上に向けて散らして流れをつけています。整った円を描くことで、きちんとした印象になり、よりあらたまった雰囲気に。ヒカゲノカズラはフレッシュな緑色が長く続き、色褪せてきても形がきれいに残ります。
戸部秀介/Shusuke Tobe35歳の時にフローリストへと転身。大手生花店、フランス人フラワーデザイナーの店で経験を積み、2016年に東京都世田谷区の中町に「宙花〜sora hana~」をオープン。リースを得意とし、ワークショップにも力を注ぐ。インスタグラム@sorahana.jp
年神様を迎えるために、あらたまった雰囲気のリースを
モミの木などの飾り付けやイルミネーションで、街はクリスマス色に染められ、道行く人たちの足取りもうきうきしているように感じられますが、そろそろ新年を迎える準備も考えなければ……。花市場では毎年12月上旬の日曜日(今年は8日)に「松市」が開かれます。お正月の飾り付けに使うさまざまなマツがこの日に全国から集まります。それを入手して、私もお正月飾りの制作をスタートさせます。ちなみに12月中旬には縁起がよいとされるセンリョウが集まる「千両市」もあり、今年は18日に開催されます。
新しい年をあらたまった気持ちで迎えられるように、お正月飾りにはマツやセンリョウ、ナンテンなど、ほかの季節ではあまり使わない伝統的な植物を取り入れています。神聖な雰囲気を感じさせる植物といえば、ヒカゲノカズラもその一つ。
古事記には天岩戸(あまのいわと)に篭もった天照大神(あまてらすおおみかみ)を引っ張り出そうとさまざまな儀式が行われたことが記されていますが、舞を踊った天宇受賣命(あめのうずめ)がたすきがけにした裳紐(もひも)がヒカゲノカズラだったといわれています。奈良や京都の伝統ある神社の儀式、また皇室関連の儀式でもヒカゲノカズラは長く利用され続けています。ヒカゲノカズラはつる性の植物で、コケのような葉が密についた長いつるをリースに利用すると繊細で優しい雰囲気になります。
ゴールドやシルバーの塗料を塗布したヤナギの長い枝を木のつるで編んだリースベースに巻き付け、アクセントに赤い実や花などをあしらうとモダンな雰囲気のリースになります。
また、お正月飾りによく利用される注連縄の輪飾りをベースに使うこともよくあります。リースは終わりがない円形であることから、ヨーロッパでは永遠のシンボルとされてきましたが、日本でも円=縁が切れないと言われ、おめでたい形として長く利用されています。新年を司る年神様を迎えるために飾るお正月飾りとして、ぜひ玄関ドアにリースを飾ってみてください。
ゴールドとシルバーに塗ったヤナギの枝を木のつるを編んだリースベース(直径約20cm)に巻きつけ、シャンパンゴールドの細いワイヤーでとめたリースです。ナンテンと白いウメの花をあしらうと華やかな雰囲気に。ヤナギは1本ずつスタート位置をずらしながら巻いていくと、太さが均等な整ったサークルになります。
直径約17cmの注連縄の円に、白、金、ピンクの水引きで作った小さな円を重ね、花や実をあしらったリースです。マツ、ナンテン、ミモザ、イネ(稲穂)、ユーカリの実、松ぼっくりを使用。透明感のある白の丸いものは、ルナリアのタネが入っているさやで、ドライ花材として出回っています。
注連縄リースでは、花や葉を下に垂らしたデザインも人気があります。金と白の水引きで円を2つ足し、長い葉が特長の大王松(ダイオウショウ)、ナンテン、稲穂、ユーカリ、松ぼっくりを右下に流れるようにあしらいました。
注連縄を二重にして大小の円を作り、ユーカリの葉2種と蕾、実をあしらったシンプルなお正月飾りです。ユーカリだけでも花や葉に形状の違いがあるので、変化のある表情になります。ナチュラルテイストのお宅によく似合うと思います。