2024年7月号から作品公募を開始した家庭画報大賞。「心を込めた私の手仕事」のテーマにふさわしい創意工夫を凝らした作品が、心温まるエピソードとともに数多く寄せられました。1次、2次の書類審査を経て、審査員の方々と家庭画報編集長、協賛4社による実物審査を通過し、栄えある受賞を果たした全10作品を発表します。
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手のひらに乗る小さな植木鉢たち
田中 邦子さん(三重県)
草花、鳥、風景などが細かく描かれた小さな陶器の植木鉢。お母様の介護をしながら、ベッドの横で作りためた作品群です。テキスタイルの図案を描く仕事をしていたため、筆を持つのは大好き。陶器の絵付けは、介護で仕事を離れた自身のストレス解消でもありました。お母様は完成した植木鉢を手のひらにのせて、楽しんでくれました。仲間の支えもあり、新たにろくろも始め、陶芸を楽しむ日々が続いています。

大きさ、形、絵付けは一つとして同じものがない。小さなグリーンや苔を入れれば、窓辺や食卓など、家のコーナーに彩りを添えることができる。●縦2~5×横2.5~6.5×高さ1.5~7.5センチ 30個。
上写真の右下にあるのは、幕末明治期の日本画家、森 寛斎の絵を写した鉢。
●協賛社より「お母様の看病をしながら作り、手にして喜ばれたというエピソードに惹かれました。絵がとても小さいのに、繊細なタッチで描かれていて、目で見て、手にのせて楽しめるのも魅力。一点一点違う絵が集まった姿も圧巻です」
〔協賛社賞/宗家 源 吉兆庵〕
和紙で作る「我が家の御節料理」
小澤 奈美子さん(埼玉県)

食材の質感に合わせて紙を選んで裁断し、色を再現するためにピンセットで和紙を貼り重ねた。黒豆の照りは水糊の重ね塗り、海老の塩焼きは和紙の繊維の重ね貼りで表現した。 ●5.5×5.5×高さ6.8センチ(3段重ねたとき)
手のひらに収まるサイズの和紙製の三段重には、和紙で作られた小さなおせち料理が30品ほど盛り込まれています。自身が経営する鍼灸院で、1月の飾り小物として作ったミニチュア版「御節料理」。年末、幼少の頃には母一人でしていたおせち作りを、やがて三姉妹で手伝うようになりました。母と自転車で買い出しに行ったのも懐かしい思い出といいます。材料はシンプルに、「一つ一つ思いを込める」ことを大切に、3か月かけて制作しました。
●協賛社より
「当社ではおせち料理を象ったお菓子を桐箱に詰めた『おせち菓子』を出していて、それに通じるものを感じました。小さいのに、まるで本物のように精巧に、一つ一つ丁寧に作られていて、盛りつけも美しく、感動しました」
〔協賛社賞/日本橋三越本店〕
繭たま ep.10
馬場 仁美さん(愛知県)

ドリルで穴を開け、繊細な刃物を使って穴を広げ、削り込む。付属の照明で下から光を当てると、幻想的な表情を見せる。
大小さまざま、形もさまざまな穴がびっしり開けられ。触れただけで壊れそうな、繊細な卵の殻。もともと細密なものが好きで、フランク・グロムさんのエッグカービングを知り、彫金をかじった知識をもとに、独学で始めました。ごまかしややり直しがきかない作業で、何度も割れたり、ひびが入ったり、心も散々折れてきました。作品作りには、集中力を維持し続けることが欠かせません。

手のひらにそっとのせる。重さは約1グラム。 ●6×4.5×高さ4.5センチ
●協賛社より
「卵というシンプルで、身近にある素材を使っているのがいいですね。やり直しのきかない作品への心の込め方に共感しました。オンリーワンに対する強い思いが“ひとのこころ”を動かす力になっているように感じました」
〔協賛社賞/和光〕
追憶
古賀 玲さん(福岡県)

リビングルームの天井まで届くような、大きなタペストリー。●縦250×横97センチ
突然の病を得て4か月、昨年4月に亡くなられたお母様の代わりに、娘さんが応募したタペストリー。お母様の小塩初子さんはパッチワークと出合って30年以上、小物やバッグ、人形、キルトなど、多くの作品を作ってきました。なかでも大好きだった地元の朝倉市の藍染めや久留米絣を使い、多くの人との出会いを思い出しながら1ピースずつ縫った作品は、母のありし日の姿に重なる宝物です。
さまざまな文様の古布を小さな四角に裁断して組み合わせ、ナインパッチで縫い合わせた。
●協賛社より
「一目見て素敵だと感じた作品です。一つ一つ丁寧に縫い合わされた布に、お母様がこのタペストリーに込めた思いを感じ取ることができました。ブルーの色合いも美しく、上下から中央部にかけて移り変わる色のグラデーションも素敵です」
栄えある受賞を果たした全10作品を展示する「家庭画報大賞展」を開催いたします。皆様のご来場をお待ちしております。
〔創刊800号記念 家庭画報大賞展〕
●会期
2025年2月19日(水)~3月4日(火)
●会場
日本橋三越本店 本館5階 ライトウェル特設会場
東京都中央区日本橋室町1-4-1
電話 03(3241)3311
営業時間:10時~19時
・入場無料