村雨辰剛の二十四節気暮らし庭師で俳優としても活躍する村雨辰剛さんが綴る、四季折々の日本の暮らし。二十四節気ごとに、季節の移ろいを尊び、日本ならではの暮らしを楽しむ村雨さんの日常を、月2回、12か月お届けします。
雨水~芽吹きの季(とき)

約7年来の相棒である三毛猫のメちゃん。
冬の間に降り続いていた雪が、いつしか雨に変わる頃を「雨水(うすい)」と呼ぶそうです。空気の潤いとともに大地も目覚め、草木が次第に芽を出し始める、芽吹きの時季。実は僕の愛猫の名前は“芽吹き”、愛称をメちゃんといいます。2月22日の猫の日も近いですね。今回はメちゃんとの出会いをご紹介します。
取材スタッフに警戒して炬燵のなかに避難するメちゃん。
出会いは今から6~7年前。生まれて間もない頃に親猫とはぐれ、踏切の近くで鳴いていたのを見つけて救い出しました。僕はスウェーデンの牧場みたいな場所で育ったため、家に馬や豚、犬やウサギなどがいて、たくさんの動物に囲まれているのが当たり前でした。日本に移り住み、仕事をしながら自分の暮らしのペースで飼えるのは猫だと思っていたので、迷わず子猫を保護。踏切という無機質な場所で見つけた小さな命が、健やかに育って欲しいという願いを込めて“芽吹き”と名付けました。こうして三毛猫のメちゃんは、僕の暮らしのパートナーとなり、心に優しい春の兆しが芽生えたような日々を送っています。
「人間の年齢に置き換えると、あっという間に僕の年齢を超えてしまいました(笑)」と愛おしそうに語る村雨さん。

出張帰りの村雨さんから離れようとしないメちゃん。
この日は、僕が海外出張から戻った翌日。ひとりぼっちで寂しかった上に人見知りのため、撮影スタッフの人影を警戒してなかなか炬燵から出てきてくれません。メちゃんとのツーショット撮影を一旦あきらめ、庭での撮影を済ませて家に入ろうとしたら、玄関にモフっとしたメちゃんの影が(笑)。僕の姿が見えなくなると寂しいんですね。
日頃、僕が外出から帰るときも、車の音や鍵をあける気配を感じると玄関までお出迎えにきてくれるのです。猫なのに、まるで犬のような忠誠心を感じると、ひとしお愛おしさが増します。仕事も趣味も活動的な僕にとって、メちゃんと過ごす時間は心底癒されるひととき。草木が一雨ごとに成長するように、僕もメちゃんとの掛け替えのない時間を大切に育んでいます。
ご機嫌が戻ったメちゃん。最後は編集スタッフにもお腹を見せてくれました。
村雨さんが見つけた二十四節気

「膨らんだ蕾に季節の尊さを感じました」と、可憐な紅梅と白梅のショットが届きました。

散歩の途中で見つけたスノードロップと水仙。「この連載を通して改めて毎年の季節の巡りを意識しています」と村雨さん。
村雨辰剛(むらさめ たつまさ)1988年スウェーデン生まれ。19歳で日本へ移住、語学講師として働く。23歳で造園業の世界へ。「加藤造園」に弟子入りし、庭師となる。26歳で日本国籍を取得し村雨辰剛に改名、タレントとしても活動。2018年、NHKの「みんなで筋肉体操」に出演し話題を呼ぶ。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」や大河ドラマ「どうする家康」、ドラマ10「大奥 Season2 医療編」など、俳優としても活躍している。著書に『僕は庭師になった』、『村雨辰剛と申します。』がある。