〔特集〕柑橘王国ニッポン。注目品種とともに「フレッシュ! 柑橘レシピ」 さまざまなフルーツにおいて、多種多様なブランド品種が増えるなか、とりわけ柑橘にもその傾向が目立つように感じます。晩夏から晩春にかけて、登場する品種がリレーのように変化し、飽きることなく楽しませてくれる柑橘たち。春に登場する注目品種の楽しみ方を、レシピとともにご紹介します。
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江森宏之さん(えもり・ひろゆき)「メゾン ジブレー」オーナーパティシエ。フランス各地のパティスリーで修業し、2017年、神奈川・中央林間に一号店を開店。日本の旬の果実にフォーカスを当てたスイーツ作りの第一人者。宮崎市フルーツ大使など多くのアンバサダーを務める。
パティシエ・江森宏之さん
柑橘大使が教える注目品種&スイーツレシピ
日本の柑橘は日々進化している
「日本は世界でも指折りの柑橘産地です。特色ある新品種も次々に出ますし、多くの地方自治体が柑橘の開発や販売促進に力を入れている。世界一の柑橘王国といっていいと思います」と、年間200種以上の果物を生産者から直接仕入れる“パティシエ界のフルーツアンバサダー”江森宏之シェフ。
フルーツそれぞれの個性を生かしたスイーツが並ぶ「メゾン ジブレー」の店頭はまるで宝箱のようです。柑橘類は江森シェフにとってとりわけ大切にしている素材。秋から春までの長いシーズンを締めくくる4月上旬だけでも、写真にあるようにたくさんの種類が厨房に集まります。
(1)万能柑橘「きよみ」は、交配品種としても優秀。(2)汁気の少ない“筋肉質”な食感に固定ファンも多い「はっさく」。(3)神奈川を代表する柑橘「湘南ゴールド」。(4)「日向夏」は甘いわたと果実を一緒に食べるのがおすすめ。(5)皮にあるアロマが魅力の「デリッシュネーブル」。(6)生産量は減りつつあるが固定ファンも多い「甘夏」。(7)温州みかんより遅い時期に出る「セミノール」は濃厚な風味。(8)「バレンシアオレンジ」にも国産が登場。(9)晩柑の代表格「土佐文旦」。

(1)皮離れのいい「ぽんかん」は甘みもうまみも魅力。(2)糖度も香りも高い「麗紅」。(3)小ぶりな「レモン」、(7)うまみのあるみかん「たまみ」はともに柑橘類の関東の一大産地・小田原産。(4)その形から名づけられた、瀬戸内海育ちの「弓削瓢柑(ひょうかん)」。(5)「でこぽん」は熊本の代表品種。(6)岩城島産の「ライム」。(8)酸味が穏やかな「マイヤーレモン」は、皮がほんのりスパイシー。(9)静岡産「ピンクグレープフルーツ」は優しい色合いも人気。国内では佐賀、静岡、熊本などでも作られている。

(1)ハイブリッド種の「シトラスレモネード」は酸味が強く、料理にも使われる。(2)「きんかんライム」は皮の苦みと酸味が個性的。(3)完熟前でもしっかり甘い「スイートスプリング」。(4)宮崎のソウルフルーツといえば皮ごと食べられる「きんかん」。なかでも「たまたま」ブランドは、皮の上品な甘みと柔らかさ、独特の香りを兼ね備えた極上品。「ブラッドオレンジ」は黒みを帯びた赤色の(5)「モロ」種が濃い味わいとこく、明るい赤色の(6)「タロッコ」種がオレンジに近いさわやかな風味を持つ。いずれも愛媛・宇和島産。(7)香りもさわやか、甘さもさわやかな「スイートレモネード」。(8)「せとか」は緻密な果肉、華やかな香りを持つ皮、その姿の美しさから「柑橘の女王」と呼ばれる。(9)皮に山椒のようなスパイシーさを持つ「バレンタインライム」は加工向き。
「最近は“紅まどんな”や“甘平(かんぺい)”に代表されるゼリーのような食感の果肉、薄い皮というタイプがトレンド。そして、香りを意識して作っている生産者も多いですね。柑橘のアロマに、大いなる創造力をかきたてられます」
食感、香り。それぞれの個性をグラデーションで味わうレシピ
【柑橘フルーツポンチ】
〈材料・作りやすい分量と作り方〉(1)シロップを作る。好みの柑橘類のジュース300mlとカソナード(サトウキビから作った茶色い砂糖)50グラムを鍋に合わせ入れ、弱火でカソナードが完全に溶けるまで煮る。そのまま冷ます。
(2)でこぽん1個、いよかん1個、ネーブル1個、ブラッドオレンジ1個は好みでそれぞれ皮をむき、薄皮と種を取り、輪切りや半月切りにする。(1)のシロップに入れ、冷蔵庫で1時間ほどおく。
(3)ミントのジュレを作る。鍋に水275mlと砂糖80グラム、ペパーミント2グラムを入れて弱火にかける。ミントの風味が十分に出たら火を止め、ミントを取り出し、アガー12グラムを加えて、柔らかめのジュレにし、冷蔵庫で冷やす。
(4)器に(2)をシロップごと入れ、上からレードルで(3)のジュレをたっぷりとかける。好みでいちごやライム、フィンガーライムなどを加えても。
【みかんのジェラート】

みかんのさわやかな香り、うまみが口いっぱいに広がるジェラート。おいしい果実が手に入ったら、絞ったジュースで作ってみたい。
〈材料・作りやすい分量と作り方〉(1)好みの柑橘類のフレッシュジュース(加糖していないものまたは少ないもの)400mlと水300mlを鍋に注ぎ、弱火で温める。砂糖150グラムを入れて、完全に溶かす。水でふやかした粉ゼラチン4グラムを加えて溶かし、火を止める。
(2)粗熱が取れたら、バットなどに流し入れ、冷凍庫で冷やし固める。
(3)完全に凍った(2)をフードプロセッサーにかけて粉砕し、アイスペーストにする。
(4)アイスクリームディッシャーですくって、器に盛り、好みのマーマレード適量を飾る。
(次回へ続く。
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