「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」は、フランスのハイジュエラー「ヴァン クリーフ&アーペル」の支援のもと2012年に設立されました。広く一般の人々に、宝飾文化のあらゆる側面を紹介することを目的としたこのレコールは、現在パリに2か所、香港、上海、ドバイの計5か所に拠点を持ち、それ以外にも「旅する学校」として世界各国で定期的に講演などを実施。日本でもこれまでに数回、特別講座や展覧会などが開催されています。
香港に拠点を置くレコール アジアパシフィックが開催する展覧会「赤銅:武士の装飾品からジュエリーまで」。展示されている36点のジュエリーは、すべてひとつのプライベート コレクションからの出展。しかも今回初めて一般公開されるものばかりという、とても貴重なエキシビションとなっています。
そもそも赤銅(しゃくどう)とは、黒みを帯びた金属で、日本では伝統的に武士の装飾品(鍔、目貫、小柄など)に用いられてきました。今回展示されているのは、金、銀、銅の象嵌に赤銅のパーツをあしらった、日本の江戸時代の情景を描き出したヨーロッパのジュエリーです。
展覧会では、武士の刀剣の装飾だった赤銅がジュエリーへと変貌を遂げていく歴史を丁寧にたどります。赤銅が西洋とどのように出会ったのか、日本の彫金や象嵌の高い技術と、ヨーロッパの美学がひとつになることで、当時のジャポニスム熱をさらに高める宝飾品が生まれていく様など……。
展示会に並ぶ宝飾品に描かれているのは、平和と繁栄の絶頂にあった江戸の裕福な商人たちの暮らしぶりや、自然の風景や植物、鳥やカエルなどの動物たち。展覧会を訪れた人々はその極めて精緻なディテールを、拡大鏡を用いた展示でじっくり堪能することができます。
これまであまり注目されることのなかった「赤銅」をテーマにした展覧会。まさに宝飾文化の共有と普及を願う「レコール ジュエリーと宝飾芸術の学校」ならではの、意欲的なエキシビションといえるでしょう。