〔特集〕コーディネート拝見から心躍るアイテムまで 春爛漫の器あそび うららかな陽気とともに、テーブルを彩る器でも思いきり春を楽しんでみませんか。集いのシーンをセンスアップするコーディネート術、進化する名窯地への小旅行、贈り物にしたい人気作家のアイテムなど、暮らしに華やぎをもたらす器の「今」にご案内します。
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食卓で季節を愛でる。
春、器のある暮らしをアップデート
目にしただけでわくわくする、華やかな春のテーブル。多様な国籍の器、アンティークや現代作家の器を自在にコーディネートする達人たちのおもてなしのテーブルから、心を摑む演出術のヒントを学びます。
磁器や陶器、ガラスに漆器、銀や錫……。和洋問わず多種多様な器が身近にあり、色や絵、形も含めた取り合わせで季節の移ろいを食卓でも満喫する。「器の国」日本で暮らす楽しみを、この春、再発見してみませんか。
水面に浮かぶ花筏を再現した、山野舞由未さんのコーディネート。はかない桜色をした有田焼のモダンな段重や墨絵アートとのコントラストが印象的で、ドラマティックなテーブル。
有田焼を主役に、四季をドラマティックに彩る
山野舞由未さん(食空間プロデューサー・テーブルスタイリスト)
山野舞由未さん(やまの・まゆみ)イギリス留学でテーブルコーディネートを学び、帰国後、百貨店やギャラリー、イベントのほか、名窯ブランドのスタイリングを多数手がける。紅茶とテーブルセッティングの教室を主宰。学IWATAYA講師。福岡県在住。
器や骨董好きな両親のもとで育ち、幼少期は休日ともなれば、窯元や古美術商巡りに連れられていたという山野舞由未さん。
「当時は陶磁器も骨董も嫌いで、退屈のあまり車中で寝ていることもしばしばでした(笑)」。
そんな山野さんですが、子育て中に過ごした欧州で食卓や紅茶の文化にすっかり魅了され、現在は食空間を美しくコーディネートする世界で活躍するように。
2025年1月に上梓した著書『有田焼で楽しむテーブルコーディネート』では、幼い頃から身近にあった有田焼の魅力を、食卓芸術のプロの視点から多角的にアプローチしています。
「柿右衛門窯や井上萬二窯、今右衛門窯など有田を代表する9つの窯を訪ね、特別な空間でテーブルコーディネートをさせていただきました。その過程を通じて強く感じたのが有田焼に携わる皆様の『有田を知ってほしい』という熱い思い。四百余年の伝統とともに息づく美意識のもとで進化を続ける有田焼を、現代の暮らしでより楽しむ術を、私なりに伝えられたらと思います」。
有田焼を主役に据えた山野さん流コーディネートの極意は3つ。食事をしているシーンが見えること。「今」を感じさせる「抜け」があること。染付や上絵付け・吉祥文様が引き立っていること。
春夏秋冬、モダンでエレガントなおもてなしの食卓は、有田焼への愛とリスペクトに満ちています。
[Spring]桜色の茶話会花曇りの日、川岸の桜並木にひらりと舞う花びらをイメージしてコーディネート。アリタポーセリンラボのモダンな段重は「JAPAN CHERRY」と名づけられた、はかない桜色。意匠ではなく、釉薬の色で醸し出す独特のムードが使い手の想像力をかきたてる。
[Summer]夕涼みのおもてなし涼を感じる文様や、冬のものと思われがちな文様もあえて夏に用いるのは、日本古来の知恵。夕涼みの食卓には、「墨はじき」で描かれた雪の結晶や錦笹絵の器に酒肴をとりどりに盛りつけて、きりっと冷えた冷酒で乾杯。すべて今右衛門窯(一部、14代今泉今右衛門 作)。
[Autumn]実りのティーパーティ明治期を代表する深川様式の一つ、花の中にうずくまるうさぎを描いた「鍋島花兎」(深川製磁)のティーセットや器を主役に据えて、花やテーブルクロス、ナプキンは秋色で統一。繊細なグラヴィールが施されたアンティークグラスが秋の日差しを優しくキャッチ。
[Winter]新春を寿ぐ食卓やわらかい乳白色の生地に柿右衛門の赤絵が美しく映える初春の食卓。戯曲『名工柿右衛門』の台詞「秋が来れば 自ずと柿まで色がつく 然かも其の色が生々として 目が覚めるやうじや」を筆書きしてテーブルセンターに据え、名工への尊敬の心とともに清らかな新年を。
『名窯を巡る、季節を飾る有田焼で楽しむテーブルコーディネート』有田を代表する名窯でのテーブルコーディネートや、今すぐ実践できるテクニック集まで。エレガントなビジュアルとともに、進化する有田焼の魅力が満載。2750円。(世界文化社刊)
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