ハラビロトンボは、浅い水辺の住人。休耕田に多くみられる。写真はメスで、オスは、様相がまったく違い青黒くみえる。敷地の大部分は竹林に覆われた荒地だったので、水辺環境からは縁遠い場所だ。
地形が全体に丘のように盛り上がっているから、50年以上前棚田だった頃は、水の確保にさぞ骨が折れたことだろう。ちょっと離れたところにあるため池や、はるか下の川から、人力で水を運びあげるしかなかったに違いない。
そんな水の気配のない場所だけれど、ただひとつだけ開墾中に気づいたことがある。
それは、もともとの田んぼの痕跡と言うべきか、真夏でもほんのりと湿って水が干上がらない場所があったのだ。そこはいつも泥がこってりしていて、水の気配がある。
よくみると、その周辺だけ、植生が違う。竹を切るとすぐ生えてきたのが、ミゾソバ。それと、2年目にはガマも芽を出し始めた。
これらは、土中に水が途切れていないことを証明してくれる指標植物だ。
(次回は8月14日更新予定です。お楽しみに。)
今森光彦
1954年滋賀県生まれ。写真家。 切り絵作家。
第20回木村伊兵衛写真賞、第28回土門拳賞などを受賞。著書に『今森光彦の心地いい里山暮らし12か月』(世界文化社)、『今森光彦ペーパーカットアート おとなの切り紙』(山と溪谷社)ほか。
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