アンビバレンスで、ちょっとつかみどころのない不思議な魅力の持ち主。気弱な男からアクの強い人物まで、役柄も幅広い。――台詞の量はかなり多いのですか?
「ずば抜けてバディだけ多いですね。自分としては、2人芝居の連続みたいなボリューム感です。それで早々に台詞を覚え始めたんですが、翻訳もので今回が日本初演なので、わかりづらかったり、ニュアンスが微妙に違う訳語を、稽古しながら直していくんです。そういうシーンでは、一瞬いちばん最初に覚えた台詞が浮かんで、ちょっと混乱します。もちろん、そうやって変えられるのはいいことではあるので、そこはプラス思考でやっているんですが、たぶん本番でも“久々に最初の台詞が浮かんできた”ということが起こる気がします」
――台詞を早く覚え始めるのも良し悪しですね。
「でも楽しく稽古するためには、やっぱり早く覚えたいんです。台詞が頭に入っていれば、色々なことができますから。それは、映像の現場でも同じです。監督によっては、直前に長い台詞を足してきたり、その台詞をもっと早くしゃべってくれと言ってきたりするので、うろ覚えで現場に行くと自分がしんどい。突然のことにも対応して、監督の言うとおりにやれるように、台詞はしっかり頭に入れていくようにしています」
――いつ頃からそうしているのですか?
「40代半ばくらいですかね。特にこれといったきっかけがあったわけではなく、失敗を重ねるうちに、段々そうするようになった感じです」
――バディの部下で脚本家志望のガイを演じる田中 圭さんの印象はどうでしょう?
「舞台では今回が初共演なんですが、すごくいい役者さんだなと思います。覚えた台詞を体に落とし込むのが早い。圭くんが演じるガイが、バディに振り回されながらどういうふうに成長していくかというのが、一番の見どころだと思うので、楽しみにしていただけたらと思います。僕も、せっかく台詞をたくさん覚えたので、高圧的な腹黒いプロデューサーとして、書類をバーンと投げつけたり、怒鳴ったり、普段できないことを思い切りやって発散したいなと思います(笑)」