地味紬を楽しむパッチワーク帯
この日のきものは、母のオーソドックスな藍大島。皆様のお母様の簞笥にも必ず眠っていることでしょう。コーディネート次第では古臭く感じられがちなアイテムに、私が合わせた帯は見ているだけで元気が出そうな一本。色とりどりの糸で縞や格子、丸柄などが賑々しくパッチワークされた中央アジアのカンタ(刺し子)の帯です。艶やかな光沢を放つ大島紬と照り葉のような鮮やか帯の競演が秋の光によく映えます。帯揚げは暖色で帯に馴染ませ、帯締めはあえて多色づかいのもので、パッチワークの柄にさらなる色を足し算しました。渋い大島紬が、まるでおもちゃ箱から出てきたような楽しく溌剌とした装いへと変身。
皆様もこんな遊び心溢れる帯があれば、お地味な紬が見違えますよ!
私が訪れた日には、ちょうど紅葉が見頃。美しい紅葉とパッチワーク帯の色が響き合っていました! 一色采子/Saiko Isshiki
女優
日本画家の故・大山忠作氏の長女として東京都に生まれる。毎日をきもので暮らしたお母様のもとで、コーディネートや着こなしのセンスを磨き、現在はファッションのアイテムを取り入れながら独自のスタイルを楽しむ。趣味の日本舞踊や三味線、長唄では名取になるほど、古典芸能への造詣も深い。現在は、福島県にある二本松市大山忠作美術館の名誉館長や二本松市の観光大使も務める。
【連載】女優 一色采子の「母のタンス、娘のセンス」
構成/樺澤貴子 写真提供/福島民友新聞社