FS を『SEIMEI』にすることは迷わなかった。
でも実はSP は持ち越すつもりでしたQ:オリンピックシーズンのプログラムについてお聞きします。FS として「『SEIMEI』』の選択は迷わなかったということでしたが、SP は正直これももしかしたらいいかな・・と考えたものはあったのでしょうか? Y(羽生結弦選手):言っちゃっていいのかな(笑)。 実は、SP は『Let’s Go Crazy』を持ち越ししようと思っていたんですよ、もともとは。4 月の国別対抗戦のときも滑りましたけど、そのまま今シーズンに使おうと。 SP に関しては僕が決めた曲ではなかったのですが、ジェフ(チーム・ブライアンの一員として、 『バラード第1番』、『Let’s Go Crazy』の振付も担当しているジェフリー・バトルさん)に最初にもらったときに、これだったらある意味『パリの散歩道』とかぶるような点もあり、演技としてはこのままオリンピックにも使ってもいいのかも?と考えていました。 ただ、自分にとっては表現の幅の振り切ったところにあるプログラムですし、2016/17 シーズンのFS『HOPE & LEGACY』や、2015/16 シーズンのSP『バラード第1番』とはすごく対照的じゃないですか。そういった自分のなめらかさ、綺麗さを出すようなプログラムではなくて、本当に内なる自分の激しさというか、楽しさ、荒さを思いきって出せる面もあったし、競技用としては珍しく観客と一体化できる作品でもあったので、盛り上がりはすごくいいなあと。なので、最初は『Let’s Go Crazy』を持ち越そうと思っていました。 公開練習後の囲み会見にて。 FS に『SEIMEI』を選んだ理由を「自分でいられるプログラム。余計なことを考えないで済む」と語った。
Q:いつぐらいに、どういう理由で『バラード第1番』に決めたのですか? Y:最終決定したのは4月の国別対抗戦の後かな。国別あとに考えたのはやはり、このプログラムであまりいい演技がしきれていないこと、イメージの悪さみたいなものがあるかなというのが気になって。僕の場合、曲によって、曲に合わせてジャンプをしてしまうんですよね。意識しているところもあるんですけれど、自動的に合わせてしまうところがあって、曲によって飛べる飛べないがあるんですよね、結構。だからこそちょっと悩みつつ、この曲が本当にオリンピックにふさわしいか、ふさわしくないかということも考えて、最終的に『バラード第1番』に行き着きました。 Q:『バラード第1番』にしようと最終決定をしたのはどなたのご意見ですか? Y:それは僕らみんなで考えました。 「3季目って見た感じどうよ?」って言われるかもしれないですけれど……。 でも、演劇とかオペラとか、宝塚もそうかもしれないですが、何回もやるじゃないですか、再演として。 繰り返すことによって、深まっていくものもあるのではないかと思うんです。 皆さん、それを何度も見たいと思ってもらえるような演技をされますよね。 それってある意味、スケートも同じで、付け焼き刃じゃないところで勝負したいというか。 ちゃんと自分が心から深く理解したうえで、そのプログラムを研ぎすましていくのであれば、やっぱりもっと時間かけたいし、時間をかけるに値するプログラムだなあと僕は感じたんです。曲としても演技内容としてもオリンピックにふさわしいものだし、自分の綺麗系のなかではかなり突出した、極まりつつあるプログラムでもあるので、スケーティングもすごく見やすいし。いろいろな長所があるからこそ、最終的に選んだプログラムだなと感じています。
国別対抗戦のときまでは、オリンピックシーズンのSP として『Let’s Go Crazy』を使うつもりだったんですね! 予想外でした。悩んだ末、選んだ『バラード第1番』。 世界歴代最高得点を叩き出した2015/16 の時点で、ただでさえ上限に近いと言われていたプログラム構成点ですが、さらにSP 史上、最高難度間違いなしの構成にバージョンアップされています。 前半にイーグルで挟んだ4回転ループ、後半にはバック・アウト・カウンターからのトリプルアクセル、そして最後の最後に4回転トウループ-3回転トウループを入れるという、攻めの姿勢が貫かれた鬼構成。 羽生選手自身「呼吸をするかのように、曲を感じることができる」という『バラード第1番』でノーミスの演技を披露してくれたら、まさに鬼に金棒ですよね。