たくさんの想いや思い出を、昇華して作品に
そんな植田さんの熱意が通じ、直接描画するという改修事業がスタートしました。
絵を描く前に、豊島区は区民からウイロードの思い出を募り、植田さんはその一部の人に直接会って話を聞きました。
パネルの上に乗り、縦横無尽に動きながら色を重ねていく植田さん。「高校時代、ドキドキしながらここを通ってデートに行った話や、近くの公園で野球をしたこと、特に印象に残っているのは、ウイロードでギターの演奏者と出会ったことがきっかけで、音楽の道を志したという方のお話。
同時にウイロード近辺の歴史についても学ばせていただいて、戦後は闇市がそばにあったことなど、さまざまな人の想いが集まる場所だということを知りました。
みなさんの心を受け取ったような気がしていて。それを自分なりに昇華させて、色に映していっています」。
6月に完成した45枚の天井パネル
2019年春からは地下通路近くのアトリエで縦3.5m、横1.7mのパネル45枚が制作され、6月に天井に設置されました。
ウイロードの近くに設置されていたアトリエで、天井用のパネル制作風景。縦3.5m、横1.7mの天井用のパネル45枚を完成させた。ほぼ1日に1枚ずつ仕上げていった。音や言葉がすべて色になった幼少時代
「どうしてあげたらウイロードが一番いい”顔”になるか、と想像しながら描いている」と植田さん。子どもの頃から、ピアノの音を聴くと、自然とそれぞれの音を表す色が頭に浮かんだという植田さん。
下絵もなしに、コンクリートのごつごつした壁に直接色をのせていく植田さんに迷いは見られず、見ていて気持ちいいほど。「一瞬一瞬に、絶対これ!」という確信があるのだと言います。
ボウルに入った塗料を豪快に流し込む。花の成長を見守るようにウイロードも育てていってほしい
「なぜだかわからないけれど、ここに惹かれてしまいます。絵を描き上げたら完成、というのではなく、その後もみなさんに育てていってほしいと思います。
ウイロードが、ここを通る人に『いってらっしゃい』『お帰りなさい』と言っているような身近な存在になってくれたらと願っています」
海のようにも、空のようにも見え、想像力を掻き立てられる絵。2019年11月まで制作現場を公開しています。ぜひ、現場に足を運んでみてください。
植田志保/Shiho Ueda
美術作家
1985年兵庫県生まれ。色に立脚した表現活動を軸に、色の有機的な動きを表現。対話を通して個人の記憶や意識に潜む色を即興で顕在化させる描画 『In a Flowerscape』 がライフワーク。東京・銀座の「森岡書店 銀座店」での個展や、東京・青山の「スパイラル」での合同展などを各地で開催。ほかに、化粧品やお菓子のパッケージ、書籍や雑誌、広告へのイラスト提供、舞台のアートワークなど幅広い分野で活動している。
連載:ジョニー楓の「運気予報」一覧>> 1000万のたましいを呼び覚ます「色のすること」~Tour of WE ROAD~
池袋ウイロードの再生プロジェクト 竣工:2019 年11 月(予定) 公開制作 実施日:竣工日までの間の平日 実施時間:9時~17時 ※日時は目安となります。 TEL:03-3981-1111(豊島区役所)