【暮らしの彩り】
素材を生かしたシンプルな形と使いやすさに“詩情”をプラス
奥:スウェーデンの「プーケベリ」の被きせガラスのハンドカット、1950年代。右はクリスタルの金彩線条紋入り吹きガラス、1900年初頭。左:型に黒ガラスを入れ気泡を閉じ込めた花瓶、デザインはヴィッケ・リンドストランド、1960年代。手前:1960年代のアリエール技法、デザインはカイ・フランク。ユキ・パリスさんは、1970年、結婚を機にデンマークに居を移し、2002年より、出身地である京都とデンマークを夫妻で行き来する暮らしを始めました。
約50年間、生活者として、そしてキュレーター、コレクター、アンティークショップのオーナーとして、北欧を見つめ続けてきたユキさんの暮らしと、ユキさんが選んだもの。
そこから見えてくるのは、暮らしを慈しみ、より豊かなものにするために、北欧の人々が育んだ生活哲学です。
「デンマークでは、週末、友人や恋人、家族がお互いの家を訪ねて過ごすことが多いため、部屋の居心地をよくすることや、インテリアに自分らしさを加えることに、常に心を砕いています」とユキさん。
年間の国民1人あたりの花の消費量は世界トップクラス。
花や緑を室内に取り込むことで自然を愛でる習慣をもつことから、フラワーベースには、その時代ごとに最高の工芸技術が注がれています。
空間に豊かな彩りと奥行きを与えるアイテムです。
奥:アールヌーヴォー期の白磁陽刻皿、1899年。手前と左:白磁レリーフ絵皿、ともに1915年。すべてデンマークの「ビング オー グレンダール」。1884年に「ロイヤル コペンハーゲン」のアートディレクターに就任したアーノルド・クローによる、アンダーグレーズ(下絵付け)の花瓶。「ヨーロッパでジャポニスムが大流行した時期のもの。当時のヨーロッパ屈指の技術で“北欧の白夜の色”を思わせてくれます」とユキさん。アールデコの時代に入ると、黒やグリーンといった、強く明快な色調が中心に。
右:銀を盛り上げて描いたスウェーデンの「グスタフスベリ」のストーンウェア“アルゲンタ”、1950年代。デザインはウィルヘルム・コーゲ。左:同じくスウェーデンの「オレフォス」による面取りのハンドカット、1930年代。 〔特集〕愛されるデザインと心豊かな時間「北欧の美しき暮らしを訪ねて」(全10回)
撮影/本誌・坂本正行 構成・取材・文/安藤菜穂子
『家庭画報』2019年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。