――ロメオとして、いちばん気持ちが入ってしまうのは、どの場面ですか?
「親友のマキューシオがジュリエットの従兄ティボルトに刺されるところからのバトルと、その後のティボルトの死を嘆くシーンまでですね。僕がいちばん好きなシーンでもあります。親友を失くした怒りで我を忘れるロメオを、毎回“ティボルトを絶対に許さない!”という気持ちで本気で演じています。実は勢いが強すぎて、舞台稽古で剣が折れてしまったことがあるんです(苦笑)。その後の甥ティボルトを亡くしたジュリエットのお母さんの怒りと悲しみ……感情が激しく渦巻く場面です。今回の公演では、ロメオとティボルトの両方を演じるので、敵対する二人のそれぞれの視点から物語をとらえて演じられることも楽しみです」
出身は大阪府。時折交じる関西弁のイントネーションがまた魅力的。――今年で新国立劇場バレエ団に入団して丸10年。どんな10年間だったでしょう?
「濃い10年でした。僕がこのバレエ団を受けたのは、所属していた大阪のバレエスタジオの先輩が新国立劇場バレエ団のプリンシパルで、いいバレエ団だよと聞いていたことが大きいんです。そんなご縁から始まって、本当に周りに支えられて踊ってきた10年だったなと思います」
――ステージに立つ際に心がけていることを教えてください。
「今は、なるべく無駄な力を抜いて、お客さまに作品の内容をお伝えすることを第一に踊っています。以前は、うまく踊らなくてはと考えすぎて、神経質になりがちだったんですね。僕は入団2、3年目頃から、ほぼ毎公演主役を踊らせてもらうようになったんですが、“新国立劇場で主役を務める”という変な気負いみたいなものが出てきた一方で、自分に自信が持てなくて。でも経験を重ねるうちに、そういうものが徐々に抜けてきて、ここ数年はいい意味で開き直ることができるようになりました。視野も少しずつ広がっている気がします」
――バレエをやっていてよかったなと実感するのはどんなときですか?
「自動販売機で飲み物を買ったときですかね。膝を曲げなくても、前屈して飲み物やお釣りが取れる(笑)。冗談はさて置き、多くのお客さまが観に来てくださるのは本当に嬉しいことで、舞台をご覧になって喜んでもらえたら、さらに嬉しいです。家族が僕のことを誇りに思ってくれているのを知ったときも、とても嬉しかった。ただ、知らないところで自分が話題になったりするのは、ちょっと照れくさいですね。バレエとはまったく関係のない仕事をしている兄から“この間、バレエが好きな同僚から、雄大の子どもの頃の話を聞かれたよ”と聞いたときは、“うわ! 何か変なこと言ってない?”って思いました (笑)」