なぜ炊飯に羽釜がベストなのか
「はかま」は袴。竈(かまど)の役目をする
羽釜は丸みをおびた底が不安定ゆえに、「はかま」にのせてガスこんろにかける。
竈のように高温の熱が安定して効率よく釜に伝わることが重要。
吹きこぼれたときには、はかまのヘリの微妙なそりが受けるので、火が消えず、ガスこんろも汚れない。
【A】重さと吸水性を備えた木蓋
釜内部の温度を98度以上に一定時間保つことで、米は生でんぷん(βでんぷん)から糊化でんぷん(αでんぷん)へと変化(アルファ化)し、たんぱく質の分解が進んでおいしいご飯となる。
重さのある蓋でしっかり密閉し、釜内部に圧力をかけることで高温を保つことができるのだ。
木蓋は厚さ3センチ以上あれば重さは申し分なく、木ゆえに吸水性にも優れており、蓋を開けたとき、ご飯に水滴が落ちる心配もない。
【B】釜の中で米の対流が起こりやすい形状
おいしいご飯に炊き上げるためには米全体を均一にアルファ化する必要がある。
羽釜の適度な深さと丸みをおびた底の形状は大きな対流を生みやすく、米粒が踊るように動くため全体が均一に加熱される。
また、火が均等に効率よく回り込む形のため、火にかけて一気に高温に持っていくことが可能。
鋳物鍋や土鍋もコツをつかめば炊飯向き
保温性に優れ、重い蓋を備える鋳物鍋や土鍋も、おいしいご飯を炊くための条件を満たしている。
ただし、効果的な対流が起こるよう浅い鍋ではなく、ある程度の深さのあるものを選びたい。
容量も重要で、炊きたい量に対して大きすぎず、小さすぎず、炊き上がりのご飯が鍋の7〜8分目ぐらいにくるサイズが理想的。
蓋は木のように吸水性がないため、水滴が落ちないよう開けるときに十分な注意が必要だ。
〔特集〕進化した新顔のブランド米を楽しむ 美味なり、日本の「米」(全4回)
撮影/久間昌史
『家庭画報』2019年10月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。