考え続け、伝えていきたい「和食のこころ」暮れも押し迫ってきた二十八日になると、うちはお餅つきをしました。子どもは師走の空気を敏感に感じてなんやわくわくしたものです。暗くなるまで外で遊んで家に帰るといもと棒だらの炊いたんのチェックです。今年の棒だらは堅いなぁ、おいもはうまいこと炊けてはるわ、とか。
三十一日の夜は、八坂さんにおけら火をもらいに行き、この火を使って一日の朝、菊水の井から汲んだ清水でお雑煮を仕立てるのです。もちろん僕らもいただきますが、その前におくどさん、弁天さん、庭中の神さんにお雑煮をお供えします。一年の感謝、これから迎える年。年の暮れはそんなことを考える、大切なときではないでしょうか。
連載も今回が最終回。僕はこれからも日本のこころ、和食のこころを折りに触れては、伝えていきたいと思っています。二年間おつきあいくださり、ありがとうございました。
村田吉弘／Yoshihiro Murata
料亭「菊乃井」3代目主人。
京都の本店と木屋町店、東京の赤坂店の3店舗を統括し、この春に京都の本店の隣に、お弁当と甘味を供する「サロン・ド・無碍」をオープン。日本料理アカデミー理事長ほか数々の要職を歴任し、「和食」のユネスコ無形文化遺産登録に尽力。和食を日本文化の重要な一つと考え、世界に発信するとともに、後世に伝え継ぐことをライフワークと考える。
和食文化の面白さ、奥深さがわかる一冊！ 菊乃井・村田吉弘さんの人気連載が本になりました
菊乃井・村田吉弘の<和食世界遺産>和食のこころ 村田吉弘 著
撮影／小林庸浩
「家庭画報」2017年11月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。
