心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる 最終回(全17回) この時期の京都は観光客も少なく、心静かに本来の魅力を堪能できる絶好の季節です。京都を代表する料亭が満を持して開催する“料亭美術館”、精緻な“手業の美”に出会える美術館やショップ、そして“冬の美味”を味わう食事処──。今、注目の京都のさまざまな美の形が、ここにあります。
前回の記事はこちら>> 【おまかせ派】割烹 いずみ〈室町三条〉
「松葉がにのしゃぶしゃぶ 湯葉 壬生菜」。かにはさばいた後、一度氷水で締めてからだしにくぐらせると、うまみを逃すことなく、その持ち味を存分に楽しむことができるという。風情ある庭を眺めながら正統派の日本料理を
店内に入るとまず目に入るのが、堂々たる欅の一枚板のカウンターと、その向こうに広がる「松の庭」。かつて呉服商を営む町家だったこの店で、風情ある庭を愛でながらの食事は、京都にいることを実感させてくれます。
紀州青石を景色の中心に据え、宮島五葉松を配した庭を背に包丁を握る料理長の小泉さん。右奥の窓はホテルのロビーとなる表屋とつながっている。厨房を預かるのは「祇園丸山」など名店で修業を重ねてきた小泉壮登さん。
冬の料理の主役は、兵庫県北部の浜坂港や柴山港に揚がった松葉がに。料理人が目の前で仕立ててくれるしゃぶしゃぶは、3月中旬まで楽しめる冬のコースの華です。
「この庭を眺めながら、旬のおいしい食材を、手を加えすぎない形でリラックスして召し上がっていただきたい」と小泉さん。
おまかせのコースの品々にも、その実直な姿勢が表れています。
煮物椀は「甘鯛と湯葉の清まし仕立て」。にんじんとかぶで作られた紅白そうめん、あぶりばちこが添えられる。天井を見上げれば京町家の構造をそのまま生かした梁が渡る吹き抜けの空間、そこに流れるのは静かなジャズ……。
街中の料理店とは一線を画するホテル内の割烹ならではの、ゆったりとした時間が流れます。
「鮑の白味噌しゃぶしゃぶ」。小鍋にはごま豆腐が入り、水菜、あわびの肝が添えられる。割烹 いずみ(かっぽう いずみ)京都市中京区室町通三条上ル役行者町361 ザ・ひらまつ 京都1階
TEL:075(211)1751(ホテル代表)
営業:17時30分~20時(LO) 無休
コース1万5000円~ 要予約
〔特集〕心静かに、向き合いたい 京都の美に触れる(全17回)
表示価格はすべて税別です。
撮影/大泉省吾
『家庭画報』2021年2月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。