トマトと牛肉のすき焼きトマトの甘みと酸味、実山椒の爽やかさが夏の暑気払いにぴったり。トマトは夏至に向けて生長し、その後は次世代のために種を残すよう、栄養を使うのだと聞きました。来年もおいしいトマトがいただけますように。詳しいレシピは次ページ>>料理・文/大原千鶴
私は4年前まで6年ほど畑をしておりまして、野菜をいろいろ育てていました。
京都の少し北のほうにある大原という場所で、自宅から車で30分もかかるのですが、山に囲まれたその畑は本当に美しく、畑仕事をしながら雲が周りの山を通り過ぎていくのを見たり、赤く染まる夕焼けを見たりするのがとても好きでした。
私にとって忙しい中、車で畑に向かい、作業をする時間は日頃の喧騒から離れるためのとても大切なものでした。
とはいえ、畑仕事はなかなか大変で、そう優雅にはしていられません。特に夏野菜作りは、なかなかせわしないものなのです。
まずゴールデンウイークの頃に夏野菜の苗を植え始め、水やりや芽かき、支柱立てとやることは目白押しです。トマトは夏の人気野菜なので、ついついたくさん欲張って植えてしまいますが、その分作業量も増えるのです。
苗を植えたらまず支柱を立てます。トマトを伸びるスピードに合わせて支柱に結わえ、しっかりと支えを効かせるのです。こうしないとトマトがなった時に重みで枝が折れてしまいます。
そして大変なのが芽かきと呼ばれる作業。葉っぱが伸びて枝分かれする場所に新しい芽ができるのですが、その芽を摘むのです。それを取らないと、葉っぱばかりが伸びてトマトの実がなりません。これがなかなか面倒。
毎日のように次々と出る芽をもぐらたたきのように摘み取り、汗だくの作業に追われてやっと黄色い花が咲いて、トマトが実り始めます。
トマトは雨に当たると皮がハゼやすく、畑ではなかなか売っているような綺麗なものはできませんが、トマト特有の青臭い香りがプンとしてエネルギーがたっぷり詰まっているのを実感します。
苦労の末に実ったトマトをたっぷり使った料理は何よりのご馳走でした。おいしかったなぁ。
トマトの旬は、私は7月までかなと思っています。8月に入るともう暑さで傷んできますし、お盆を過ぎて朝夕が涼しくなると、トマトが色づかなくなってきます。
すると「あぁ、もう夏も終わりなのだな」と肌で感じ、夏の終わりのさみしい気持ちが、赤くなり損ねたトマトの色に重なるように思われるのでした。
太陽の恵みのような真っ赤なトマト シンプルにいただくのがおすすめです
私の料理は素材の持ち味をなるべく生かすよう、シンプルなものが多いです。特にトマト料理はごくごくシンプルに。走り・旬・名残と微妙にその持ち味を変えるトマトを堪能しましょう。
トマトすりすりはその名のとおり、トマトをすっただけのもの。ジュースでもスープでもないおいしさです。
プチトマトも個体差、つける時間で味が変わりそれが楽しいものです。どのレシピも作るたびに味がちょっとずつ違う。それが家庭の料理だと思います