今後、多死社会へと向かう日本で、看取る側・看取られる側、いずれの関心も高くなっている在宅死。9月21日に公開される『人生をしまう時間(とき)』は、患者やその家族と向き合う在宅診療のベテラン医師・小堀鷗一郎(こぼりおういちろう)氏と医療チームに同行した下村幸子監督がみずからカメラを回し、命の現場を記録したドキュメンタリーだ。
2018年6月にNHK BS1スペシャルで放映後、大きな反響を呼んだ『在宅死 “死に際の医療”200日の記録』に新たなシーンを加えて再編集した本作は、在宅介護の現場も、人の最期の迎え方も百人百様であることを伝えている。
「取材者としてというより、ひとりの人間としてお付き合いできればと思って」といい、映画の完成後もご家族のもとに通い、看取った側の心の変化を見つめている――そんな下村監督は、在宅での看取りにこうすればいいという正解はないけれど、それでも考えること、話し合うことが大切ではないかと話す。
――映画には9つの家族が登場しますが、家庭の気配や匂いまで伝わってくるような、カメラと被写体との近しさを感じました。あるがままを撮って、見ている皆さんに、現場に立ち合っているように感じてもらえればと思っていたので、そういっていただけるのは嬉しいですね。まずは小堀先生の訪問診療に同行して、患者さんやご家族に取材をしたい旨を伝えましたが、ざっくばらんにお話しできるようになるまで、カメラを持たずに何度か通ったりもしました。
患者さんやご家族の反応は本当にそれぞれでしたが、撮影に当たってはテクニックなどを考えずに、素の自分で皆さんに向き合おう、と。取材者としては、先生の診察の妨げになるようなことだけは絶対にやらないと決めて、なるべく自分を消して、その場にいるようにしていました。