放っておかないこと、慣れてしまわないこと。若者も更年期世代も気になる女性のめまい、耳鳴り、難聴
天野惠子先生静風荘病院特別顧問、日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。1942年生まれ。1967年東京大学医学部卒業。専門は循環器内科。東京大学講師、東京水産大学(現・東京海洋大学)教授を経て、2002年千葉県立東金病院副院長兼千葉県衛生研究所所長。2009年より静風荘病院にて女性外来を開始。加齢とともに、高音から聞こえにくくなる
加齢性難聴の原因は内耳の中の有毛細胞(音を電気信号に変えて脳に伝える)の損傷。加齢や大音量を長時間聞き続けることで進行し、一度ダメージを受けた細胞は修復されません。
高い音や子音から聞き取りにくくなるのが特徴で、電子レンジや体温計の信号音に気づかない、「基地」と「位置」の聞き違いなどが生じます。
高齢者は高い音ほど聞き取りにくい
加齢による聴力の変化(女性)
聴力検査の結果は上のようなオージオグラム(聴力図)で示され、その高さの音(横軸)を聞き取ることのできる音の大きさ(縦軸)を表す。この図から、高音域の聴力は60代から低下し、高齢になるほど高音は大きな音でないと聞き取れないことが読み取れる。 Audiology Japan 56,269〜275,2013より血流の悪化もリスクとなり、動脈硬化のある人は高音域の聴力が低下しやすいとの研究結果が出ています。
早く気づくためにも、ほかの病気(突発性難聴、メニエール病など)との鑑別のためにも定期的に聴力検査を受けましょう。
イヤホン・ヘッドホンの長時間使用に注意
増えている“騒音性難聴”
ヘッドホンやイヤホンの長時間使用は難聴のリスクを高めることを知っておきましょう。「2016〜2020年の20代女性の聴力は、2000〜2004年の40代女性と同程度」という衝撃的な報告が出ました。
国立病院機構東京医療センターによると、近年、40代以下の男女ともに、音響によるダメージを最も受けやすい高音域(4000Hz)の聴力が明らかに低下しており、イヤホンやヘッドホンで音楽を聴く環境が影響している可能性が高いとのこと。
加齢と大音量が重なると難聴は加速します。音量を小さめにする、長時間聞き続けないなどの注意は全世代の現代人に必要です。
【対処法】めまいには漢方薬もよく効く。
加齢性難聴には補聴器を
●めまいの症状別に漢方薬を使い分ける漢方では、めまいの原因を血虚(血液の循環障害)と水毒(リンパ液や組織間液の滞り)ととらえ、これらを改善する漢方薬を用います。
更年期のめまいによく使うのが苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)で、動くとくらくらするめまいや立ちくらみによく効きます。
ふらっとしたり雲の上を歩いているような感覚のふわふわしためまいには真武湯(しんぶとう)。天気が崩れるときに調子を崩し、頭が重くなる回転性めまいには五苓散(ごれいさん)など。症状によって使い分けます。
耳鳴りの約4割に牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)が効くといわれています。ちなみに天野先生の耳鳴り解消法は、腹式呼吸だそうです。
●難聴対策の基本は生活習慣。補聴器の使用は早めに大きな音に長時間にさらされないことや血流の悪化を防ぐことは難聴の予防や進行を抑える効果があります。生活習慣の見直しは難聴対策の基本。運動習慣のある人はない人に比べて難聴になりにくいともいわれています。
聞こえの悪さを自覚したり周囲から指摘されたら、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。自分に合った補聴器を積極的に使うことは、社会活動や生活の質の維持、ひいては認知症予防に有効です。
*NPO法人性差医療情報ネットワーク「女性外来マップ」では、女性外来を開設している医療機関(2018年現在約300か所)のリストを公開。
URL:
http://www.nahw.or.jp/hospital-info*「女性外来オンライン」(天野惠子先生主宰)では、天野先生ご自身が厳選した女性の健康の回復や維持に役立つ信頼性の高い情報を発信しています。
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