幸福長寿に導く5つの活 第7回(全16回) 「幸福長寿」の決め手は、健康寿命をいかに延ばせるかということ。そして、それは自分でも心身の衰えを感じるようになった今からの生活の過ごし方とも深くつながっています。“現在の私と未来の私”のためのセルフメンテナンス法をご紹介します。
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筋肉量を増やして転倒・骨折を防ぎ、一生、自分の足で歩く
全身の筋力の目安となるのが握力。同年代の平均握力を下回っていたら積極的に筋肉づくりを。50〜54歳女性の平均握力は27.72kg(令和2年度。スポーツ庁健康スポーツ課の調査結果より)。“食べて動く”生活習慣が筋肉を鍛え、骨も丈夫にする
〔お話ししてくれたのはこの方〕金 憲経先生東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と精神保健研究チーム 研究部長。筑波大学大学院スポーツ科学研究科修了。1998年より現職。「アクティブシニア『食と栄養』研究会」(https://activesenior-f-and-n.com/)運営委員。フレイルと筋骨格系の健康研究に取り組んでいる。75歳を境に身体機能や認知機能が落ち、要介護状態になる人が急に増えてきます。主な原因は筋肉の衰え。「80代、90代を元気に過ごすには、50歳前後から筋肉を維持し、強化する生活習慣を身につけることが大事です」と金(キム)憲経(ホンギョン)先生は語ります。
金先生が注目するのは体の中で最も大きく、加齢とともに減りやすい太ももの筋肉(大腿四頭筋)です。この筋肉が衰えると歩きが遅くなる、歩幅が狭くなるなど歩行機能が低下し、転倒のリスクが上がります。また膝に負担がかかり、膝の痛みを引き起こします。
「やがて外に出るのが億劫になり、人づきあいが減り、徐々に社会性が失われていきます。また、背筋や腹筋が衰えると背中が丸まって姿勢が悪くなり、さまざまな動作が緩慢になります。このように、筋肉が衰えると、運動機能だけでなく意欲や楽しみといった心や脳の健康、見た目の若々しさも失われてしまうのです」
筋肉が機能を発揮するには、量と質(筋力)の両方が必要です。まずは、たんぱく質をしっかり摂って筋肉量を増やしましょう。たんぱく質が体内でアミノ酸に分解されて筋肉の組織が作られるからです。そして“食べたら動く”を心がけます。運動することで筋肉内の脂肪が減って収縮力が高まり、質のよい筋肉になります。
また、筋肉は骨と一体化して身体機能を担っています。更年期以降、骨密度は低下しますが、筋肉を鍛えれば骨を保護することができます。「元気なお年寄りはよく食べ、よく動き、おしゃべりも楽しんでいますね。特別な運動をしなくてもライフスタイルを“静”から“動”に変えるだけで筋肉はついてきます。健康づくりは苦ではなく、本来楽しいものなのです」