9月に東京2020オリンピックの日本代表を決める「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」が開催され、男子は大激戦の末、中村匠吾選手が優勝、服部勇馬選手が2位となり、代表に内定しました。レース後まもなく2選手から話を聞いた松岡さんが感じた、それぞれの強さの秘密とは? さらに、開催地が札幌に変更になったことについての思い、アスリートにとって「代表選考」「内定」が持つ意味についても語ります。
MGCで東京2020大会のマラソン代表に内定した4選手。右から、男子2位の服部勇馬、優勝者の中村匠吾、女子優勝者の前田穂南、2位の鈴木亜由子。マラソンの代表枠は男女各3名で、残る各1名は今後開催されるいくつかの指定大会を経て決定されます。写真:YUTAKA/アフロスポーツ初めての試みだったマラソン代表選考会「MGC」
先日、MGCで東京2020オリンピックのマラソン日本代表選手男女各2名が決まりました。オリンピック本番の約1年前という時期に、候補選手たちが同じ条件下で一緒に走り、内定者を決めるという選考方法は、今回が初。賛否両論あると思いますが、前向きに捉えた人が多かったのではないでしょうか。僕もその一人で、内定した選手たちが本番に向け、集中してじっくり調整ができるのは、選手の負担も少なくなるのでいいことだと思います。
今回代表に内定した中村匠吾さんと服部勇馬さんからお話を伺ってわかったのは、お二人とも暑さに強く、坂道にも強いということ。それがMGCの結果につながったのだと思います。
中村さんは冷静かつ努力家で、きつい練習もこなせる選手という印象。ピークをぴったり合わせられたことが大きかったそうですが、「もうちょっと暑くてもいい」との発言には驚きました。また、あまり汗をかかないという話も意外でしたが、その分、体力の消耗が抑えられているのではないかと思います。
坂道については、「自分も好きではないけれど、それはみんな同じ。だからこそ、一所懸命練習すれば自信になる」と考えて坂道トレーニングを積み、勝負どころと見定めていたゴール前の急坂を快走。予定どおりのレース展開で優勝しました。これから修正すべき点もわかっていて、この一年で修正する自信があるとのこと。頼もしいですね。
服部さんはどちらかというと天才肌タイプのようで、以前は自分を厳しく追い込むような練習はしていなかったそうです。その彼を変えたのが、2018年の夏、アメリカ・コロラド州で行われた日本陸連のマラソン合宿。2019年のアジア大会で優勝した井上大仁さんのストイックな練習内容と膨大な練習量を目の当たりにして衝撃を受けた服部さんは、自らの練習を根本から見直しました。
基礎練習を増やし、40km走のあとに坂道を走るといったハードな練習を積み重ねたことで、「これだけやってきたのだから、誰よりも強いはずだ」という思いでレースに臨めたのだそうです。話を伺っていて、服部さんはまだまだ伸びしろがあるように感じました。
デッドヒートを制した中村選手。写真:築田 純/アフロスポーツ