365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> 引き算で美しい構図を作ろう!
江戸ツバキの銘花とされるツバキ‘唐錦’。淡いピンク地に紅の吹き掛け絞りが密に入る美しい姿をカメラマンの横田さんが撮影していました。手前に入ってくる葉を枝ごとひもで避けての撮影。余分なものを省くと、主役の花がより美しく引き立ちます。‘唐錦’は本来は2月頃から開花しますが、12月に一部開花することもあるそうなので、探してみてください。11月29日、
30日に続き、この連載の写真を撮影してくださっているカメラマン、横田秀樹さんに花の写真をより上手に撮るためのノウハウを教えていただきました。今回のテーマは「どうしたら美しい構図が作れるか」についてです。
構図とは写真の画面構成のことです。実際に見てきれいだと思った花や景色が、撮った写真を見るとそれほどでもなかった、という経験はありませんか?写真はそこに見えているものすべてがそのまま映るので、本来は省きたかったもの、たとえば終わった花がらとか、引いた景色なら看板なども入ってしまいます。
ポイントは「写真を撮る前に画面から余分なものを省く」こと余分なものが入ることで散漫になり、主役の存在が薄れてしまうため、思ったほどきれいではない写真になりがちです。写真を撮る前に画面から余分なものを省くことで、主役が引き立つ美しい構図が作れます。
アップで撮影する場合花をアップで撮影する場合、まず省きたいのがその周囲にある花がらや枯れている葉、花についているゴミなどです。ゴミは手で払い落とせばOK。花がらや枯れた葉は、観光ガーデンであれば勝手に取るのではなく、ガーデナーさんにお願いするか、断りを入れてから取り除くようにしてください。
こちらは私が撮影した引き算をしていない失敗作。下の写真と同じサルビア・スプレンデンス。右下の葉の上には花がら、その下の葉の上にはゴミが……。簡単に取り除けたのに、どうして気がつかなかったのか。プロが撮影横田さん撮影のサルビア・スプレンデンス‘シズラー バーガンディ ハロー’の濃淡ピンクのかわいらしい花がとてもきれいに撮れています。また、撮りたい花の手前にある枝や葉も画面構成から省きたいことがよくあります。その場合は、一緒にいるかたにお願いし、撮影するときだけ手でそっと避けてもらうのがおすすめです。ちなみに横田さんは、いつも布のひもを持参していて、それを省きたい枝や茎にかけて、画面の外に出るように引っ張っています。U字にかけてそっと引き、決して植物を傷めないように気をつけているそうです。
景色を撮影する(少し引いた写真を撮る)場合花が咲く景色のように少し引いた写真を撮る場合によくあるのが、看板や標識、また車が画面に入ってしまうことです。そんなときも「しようがない」と諦めず、省きたいものが隠れるアングルを探すことが大切だそうです。
こちらも引き算をしていない私の失敗作。ダリア園の景色には、鉄塔やら電線が入り込んでいました。いくら引きの写真が撮りたいからといって、これは美しい構図とはいえないと反省。下の横田さん撮影の写真と見比べてみてください。プロが撮影上と同じダリア園の景色を横田さんが撮影。高圧線の鉄塔や電線を避けられる構図で、さすがにプロだなと感心。カメラを構えたまま、右、左に位置をずらす、またアングルを上下にずらしてみるだけで、それらがうまく隠れる位置が見つかることもよくあるそうです。
とくに赤いものはぼけていていもよく目立ち、主役の存在を薄くしてしまうこともあるので、優先的に画面からはずすように気をつけているそうです。余分なものを省く、つまり引き算で構図を作ることで、写真の仕上がりはぐっと美しくなるそうなので、ぜひ試してみてください。
高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。