365日 花散歩に出かけよう 日々、何気なく歩く道や街で出会う花や花木の名前がわかれば、もっと散歩が楽しくなります。ガーデニングエディターの高梨さゆみさんが、季節の花や花木を毎日紹介。住宅街でも見つかる身近な植物や、人気の園芸品種もピックアップ。栽培のコツも紹介します。
一覧はこちら>> ワイゲラ
日本に自生するタニウツギの基本種は、学名をワイゲラ・ホルテンシスといい、かわいらしいピンクの花を咲かせます。■属科・タイプ:タニウツギ科の落葉低木
■花期:5月〜6月
ウツギとタニウツギ。名前は似ていても別の花木です
5月になってから散歩道で咲く花木がぐんと増え、見かけるたびに立ち止まって花を愛でるので、散歩の時間が長くなって帰り道を急ぐことが多くなりました。花散歩が楽しい季節ですね。
さて、この時期に咲き出す花木には〇〇ウツギと呼ばれるものが多くあります。いずれもウツギの仲間と混同しがちですが、本来のウツギはアジサイ科でデーチアという学名のものを指します。
今回ご紹介するワイゲラはタニウツギの和名でよく知られますが、タニウツギ科なのでウツギとは異なる花木です。日本に自生するオオベニウツギやハコネウツギなどもワイゲラの仲間です。
もともとウツギは漢字にすると空木。幹が中空であることから名付けられました。ワイゲラの仲間も幹が中空のものが多く、花期もウツギと重なることから〇〇ウツギという和名がつけられたようです。
ワイゲラもデーチアも丈夫な性質で育てやすいため、観光ガーデンや個人邸の庭でよく利用されますが、見かけるたびに「これはワイゲラ?それともデーチア?」と迷うこともしばしばです。
ある観光ガーデンで斑入りのワイゲラが淡いピンクのかわいらしい花を咲かせていた際も、「これはどっち?」と迷ったのですが、ガーデナーさんが「ワイゲラですよ」と教えてくれたので、あれこれ調べて悩む必要なくすぐに解決。花摘みで忙しい手をとめて答えてくれたガーデナーさんに感謝です。
オオベニウツギの斑入り種‘バリエガータ’は、花が大きめで、斑入りの葉が明るい印象。人気のある品種です。学名はワイゲラ・フロリダ‘バリエガータ’。枝が枝垂れるように伸びるワイゲラは、庭に植えるときれいな景色を生み出してくれます。自然にコンパクトな樹姿にまとまるので、剪定など管理の手間も少なくてすみます。花木苗の生産者さんによると、手間がかからない=ローメンテナンスというのは、人気になる大きな条件なのだそうで、ワイゲラはこれから世界中でさらに人気が上がる花木だそうです。
病害虫の心配もほとんどないと聞けば、ワイゲラを育ててみたくなりますよね。私は美しく花咲くワイゲラを愛でながら「庭があればなぁ~」といつもうらやましく思っています。
栽培の難易度
日当たりがよく、水はけのよい土壌に植えます。植えつけ時に元肥を施し、たっぷり水やりします。幼木のうちは土壌が乾いたら水やりしますが、成木になれば雨まかせでかまいません。終わった花は随時摘み取るときれいな姿が保てます。花後すぐに、長く伸びすぎた枝を切り落とします。落葉後の剪定は枯れ枝を取り除き、込んでいる箇所を透かす程度でかまいません。
【難易度】
★ 容易・初心者向け
★★ 標準・初級〜中級者向け
★★★ 少し難しい・中級〜上級者向け
★★★★ 難しい・上級者向け
★★★★★ 栽培環境が限られる 高梨さゆみ/Sayumi Takanashi
イギリス訪問時にガーデニングの魅力に触れて以来、雑誌や本などで家庭の小さな庭やベランダでも楽しめるガーデニングのノウハウを紹介。日本、イギリスの庭を訪ね歩くほか、植物の生産現場でも取材を重ねる。