桐島ノエルの温泉ダイアリーズ 国内外問わず多くの“いい湯”に浸かってきた桐島ノエルさんが、ご自身の記憶に残る温泉の魅力を綴ります。
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神奈川県/稲村ヶ崎温泉
(文/桐島ノエル)
10代半ばで横浜から東京へ移住した。どこに行っても人がいっぱいで、どこにいても常に人の気配がする。若い頃はそれが魅力で、刺激的な毎日をフルにエンジョイしていたが、20代半ばにもなると次第に疲れてきた。
情緒不安定になりつつあった私は、必死でバランスを取る方法を探した。
そんな時にたまたま訪れたのが麻布十番温泉だった。
大都会の真ん中に、まさかの温泉。1階にはクラシックな雰囲気の銭湯があり、地下500mから汲み上げた天然温泉を薪で沸かしていた。3階にはサウナ付きの小ぢんまりとした温泉と、食事もできるお座敷やカラオケまであった。
そのホッとするレトロな雰囲気が大好きで、麻布に住んでいた頃は足しげく通ったものだ。
思い出深い十番温泉も後継者不足で、いつの間にか駐車場になってしまった。
前を通るたびにジョニ・ミッチェルの『ビッグ イエロー タクシー』の歌詞が頭をよぎる。
"They paved paradise and put up a parking lot" 〜パラダイスを潰して駐車場を作っちゃった〜最近多いなぁ、そんな瞬間。
しかし、この出会いをきっかけに、同じ麻布に「竹の湯」という温泉銭湯も見つけ、探せば意外と近場に良い温泉がいくつも存在することを知った。