国宝・温泉・美味の宝庫「九州を愛す」 第2回(全19回) 諸外国との交流で生まれた独自の文化、火山が生み出す豊かな湯量の温泉、山海の恵み、四季折々の食材──。多様性に満ちた九州の魅力を、「国宝」「温泉」「お取り寄せの美味」をキーワードにしてご紹介します。
前回の記事はこちら>> 内外の文化交流の歴史を今に伝える
国宝の魅力を識る
中国や朝鮮半島、ヨーロッパとの交流の玄関口であった九州には、諸外国の文化が流入し、ほかの地にはない文化が今に伝わります。大分と長崎に残る神社、寺、教会など、趣を異にする国宝建築4件をご紹介します。
前回の記事はこちら>>正面3間、側面4間の本瓦葺き宝形造りの富貴寺大堂。1952年に国宝に指定された。中に須弥壇(しゅみだん)があり、その上に本尊である阿弥陀如来坐像(国指定重要文化財)が安置されている。九州最古、平安期の木造建築
富貴寺(ふきじ)
宇佐神宮の大宮司が極楽浄土を願って念仏別所として開いたという由来を持つ富貴寺。参道の石段を上ると右手に本堂があり、さらに上り切ったところに九州最古、平安時代後期に建立された木造建築であり、国宝の富貴寺大堂が姿を現します。
この大堂は京都・宇治の平等院鳳凰堂、岩手・平泉の中尊寺金色堂と並ぶ阿弥陀堂といわれており、鳳凰堂や金色堂のようなきらびやかさはないものの、その静かで優美な佇まいからは気品が感じられます。
本尊の阿弥陀如来坐像。榧かやの木の寄せ木造りで、平安時代末期の作。穏やかな表情、衣の柔らかな質感など、往時の繊細で高度な技術が見てとれる。大堂内の壁や柱には大堂建立と同時期のものとされる浄土図、来迎図がびっしりと描かれています(国指定重要文化財)。当初は色彩鮮やかだったものが、時代を経て淡くおぼろげに残っています。
富貴寺を訪れるならばおすすめは晩秋。境内の銀杏が色づいた葉を落とす中に大堂が建つ様は、まさに息をのむ美しさです。
富貴寺大分県豊後高田市田染蕗2395
TEL:0978(26)3189
拝観時間:8時30分~16時30分
拝観料:一般500円
〔特集〕国宝・温泉・美味の宝庫「九州を愛す」(全19回)
※今特集は、2016年3月号「国宝を観る」、2018年2月号「極上の湯宿を楽しむ」、2018年6月号「緑、眩しい九州へ」、2018年11月号「秋の国東半島へ」などを再録、再編集したものです。
撮影/小野祐次
『家庭画報』2020年9月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。