精神科医の禅僧が贈る「幸せ力を高めるマインドフルネス」第5回(前編) 春は、出会いと始まりの季節。新しい環境に身を置くときは誰もがストレスを感じるものですが、なかには人一倍不安を募らせ心の安定を保てなくなる人もいます。一日1、2回の瞑想で、静かに呼吸に意識を向けてみませんか? やがて浮足立った心が落ち着き、環境の変化も「成長のきっかけ」と考えられるようになります。
前回の記事はこちら>> 過剰適応してしまう人も溶け込めない人も
環境の変化は成長のチャンス。“ぶれない心”を育みましょう
こんなあなたへ●コミュニティに、新しい人が入ってくると緊張する。
●初対面の人の前だと、ついテンションが高くなる。
●何でも引き受けてしまい、後悔することがある。
〔お話ししてくれたのはこの方〕
川野泰周(かわの・たいしゅう)さん臨済宗建長寺派林香寺住職、精神科・心療内科医、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルケアクリニック副院長私たちは、変化に適応しながら新しい生き方を獲得している
写真/アフロ隣に新しく家族が越してきた、習い事のサークルのメンバーが増えた、上司が異動してきたなど、年度の変わる春は生活環境が新しくなる時期でもあります。
それを期待や楽しみに感じられればよいのですが、場の空気を察するのが苦手で周囲にうまく溶け込めない人や、察しすぎてしまうHSP(Highly Sensitive Person。繊細すぎる人)傾向のある人は環境の変化にうまく適応できず、人一倍不安を募らせて心身の不調をきたしてしまう場合があります。
そのような人は、周囲の変化を柔軟に受け止める心と、「自分は主体性を持ってこの場にいる」と実感できるぶれない心を育むことが必要だといえます。それによって、「変化は恐れるものではなく、成長のチャンスだ」ととらえ方を修正することができるからです。
変化のない生活が心の安定をもたらすわけではありません。自律神経は程よく揺らいでいる状態でバランスよく働き、マンネリ化は心身の不調の原因になります。私たちは変化に適応しながら新しいスキルや生き方を獲得しているのです。