幸福長寿に導く5つの活 第13回(全16回) 「幸福長寿」の決め手は、健康寿命をいかに延ばせるかということ。そして、それは自分でも心身の衰えを感じるようになった今からの生活の過ごし方とも深くつながっています。“現在の私と未来の私”のためのセルフメンテナンス法をご紹介します。
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ライフスタイルを見直して、脳の働きを強化する
〔お話ししてくれたのはこの方〕加藤俊徳先生加藤プラチナクリニック院長 「脳の学校」代表・脳内科医。昭和大学客員教授。1995~2001年、米国ミネソタ大学にてアルツハイマー病などの脳画像研究に従事。独自開発した加藤式脳画像診断法を用いて小児から超高齢者まで1万人以上の診断・治療をする。脳は何歳になっても成長し続ける。中高年は脳が最も輝く年代
「年齢とともに物忘れが多くなるのは、経験知が増すことで必死に暗記しなければならないような機会が減り、記憶にかかわる海馬を使わなくなるからです」と加藤俊徳先生はいいます。脳の中でも海馬は最も衰えやすく、一般的には40代後半から萎縮していく傾向がみられます。
「とはいえ、悲観することはありません。脳全体が老化しているわけではなく、大部分の脳はしっかり機能しているからです。この問題のない部分を伸ばしていくことで、脳内ネットワークの連携が強化され、衰えてしまった部分をカバーすることができます」と加藤先生は説明します。
人体のさまざまな臓器の中でも、脳は最も寿命が長く、鍛え続ければ120歳まで成長する力を持っているといわれます。
また、脳には体の発達や年齢に応じてより活発に働く部分が移り変わっていくという特徴もあります。例えば人間だけが持つ「超脳野」と呼ばれる3つの分野は、いずれも30代以降に活発化し、その成長期は年齢によって異なります。
記憶力や知識の蓄積との相関関係がある「超側頭野」は30代、五感で得た情報を分析・理解する働きを持つ「超頭頂野」は40代、そして実行力や判断力など脳の司令塔的な役割を担う「超前頭野」は50歳を過ぎてからです。
「どの超脳野も年齢を重ねれば重ねるほど成熟させられる部分です。つまり、脳は何歳になっても成長し続けることができるため、“もう年だから”とあきらめてはいけません。さまざまな経験を積み、人間力も高まってきた中高年こそ、脳が最も輝く年代なのです。自分で自分の脳の限界を決めないことが何よりも大切です」と加藤先生は強調します。