観る側から演じる側へ。出演への渇望が叶う
新しいお札の顔となる渋沢栄一をNHK大河ドラマ『青天を衝つけ』で熱演中の吉沢 亮さん。「日本資本主義の父」と呼ばれた人物を吉沢さんを通して知ることになった人も数多くいる。
吉沢さんは、実在した人物を演じるうえで、どんなことを大切にしていたのだろうか?
「もちろん史実に基づいていなければならない部分もあると思いますが、あくまでもエンターテインメントとして、『青天を衝け』という物語の中での渋沢栄一さんを演じています。遺っている資料を見ると、彼はやっぱりすごい人なのですが、今回のドラマでは英雄扱いをしていないんです。一人の人間だからいいところもあれば汚い部分もあるし、本人が英雄というよりも、むしろ周りにいた英雄たちからいろんなものをもらって成長していった人だと思います。ですから、彼が実際に何をしたかという部分にとらわれずに台本にあるものを一生懸命に演っているという感じですね」
俳優として大河ドラマの主演という大役を果たして迎える2022年のスタートに吉沢さんは舞台作品への出演を選んだ。毎週、目にしている吉沢さんを今度は生の舞台で見る機会が用意されているのだ。
ご自身の体験に生の舞台だからこそ得た感動があるのか、伺ってみた。
初演は観客として拝見した作品です。そのとき受けた衝撃を伝えたいですね── 吉沢さん
「舞台でいえば、僕たち俳優からすると演じる側にいるか、観る側にいるかで違うのですが、『マーキュリー・ファー』に関しては初演を拝見していて、観る側としての衝撃を受けました。前回はシアタートラムという200人ぐらい入る劇場だったので劇場自体に密閉感がありましたし、それがすごい緊張感と臨場感を感じました。目の前で役者さんがリアルに演技しているときの息づかいや全身から出ているエネルギーみたいなものが、とんでもない衝撃でした。
あれは生だからこそ伝わるものだったと思います。あの舞台上の世界に行って、役者として生きたいという気持ちが湧き起こって、ものすごくうらやましかったです。ものすごく残酷で、辛い物語ではありますが、それぞれがその場で必死に生きている。役者さんたちがすごく格好よく見えて、こういう作品に出たいと思いました」