加齢とともに骨の形成力が落ちていく
先に述べたように、女性にとっては閉経が大きなリスクです。また、加齢は男女ともにリスクになります。
年をとると食が細くなり、骨の形成に必要な栄養素が不足しがちになること、また、せっかくカルシウムを摂っていても腸管での吸収が悪くなることがその原因です。
運動不足も骨粗しょう症の誘因となります。骨芽細胞は重力がかかると活性化することが知られています。そのため、適度に骨に重力をかける運動によって、骨量が保たれます。運動不足になると、この働きが期待できなくなるのです。
宇宙飛行士は宇宙で骨粗しょう症になるといわれます。これは無重力の環境下で骨の形成がうまく行われなくなるためです。
「同じように体重が極端に軽い人も骨への負荷が少ないため、骨粗しょう症のリスクが高まります」(能瀬先生)。
過度のアルコール摂取は骨芽細胞の働きを抑制し、喫煙はエストロゲンの分泌を抑えることから骨粗しょう症のリスクになることが知られています。
持病や病気の治療にも注意が必要です。骨芽細胞はインスリンによって活性化します。そのため、インスリンが不足したり、細胞で働きにくくなったりする糖尿病は骨粗しょう症のリスクの一つです。
また、腎臓病では血液中のカルシウムが不足しやすくなるため、骨からカルシウムが流出するのです。
乳がんのホルモン療法を受けている人や、ステロイド薬を長く内服している人も骨量が減ることが明らかになっています。
骨密度検査を受けてみましょう
骨密度検査は人間ドックではオプションで受けられます。また、整形外科や産婦人科、内科などのクリニックや病院でも骨量の測定装置を設置しているところがあります。骨量が気になる場合には検査の希望を申し出てみましょう。
測定方法としては、X線を使うDXA(デキサ)法、手のX線写真を撮影するMD法、かかとの骨に超音波を当てる方法があります。
「DXA法で腰椎を撮影するのが最も正確です。超音波による検査は簡便で、被ばくもなく、骨折の危険性はある程度わかりますが、骨粗しょう症の診断には使えません」と能瀬先生は解説します。
また、検査を受ける頻度としては、「骨粗しょう症とは診断されていなくても骨量がやや少なめでボーダーラインに入っているなら1年に1回くらいを目安に、骨量が十分あるとわかれば2年に1回くらいを目安に測定するといいでしょう」とのことです。
〔解説してくださった方〕能瀬さやか(のせ・さやか)先生東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科。2003年北里大学医学部卒業後、同愛記念病院で研修、2006年に東京大学医学部産婦人科学教室に入局。同大学医学部附属病院・女性診療科・産科、実家である八戸クリニック産婦人科、国立スポーツ科学センターメディカルセンターなどに勤務。2017年から現職となり、女性アスリート外来を開設。日本産科婦人科学会専門医。 取材・文/小島あゆみ イラスト/にれいさちこ
『家庭画報』2012年12月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。