専門医に聞く 今、気をつけたい病気 第3回(02) ふくらはぎや太もも、足首の表面にでき、見た目が気になる下肢静脈瘤。その原因やリスク、診断や治療、予防の方法について、血管の専門医に教えていただきます。
前回の記事はこちら>> 〔解説してくださるかた〕福島第一病院 院長、心臓血管病センター長、心臓血管外科部長
小川智弘(おがわ・ともひろ)先生
●前回の記事
足の瘤に夕方の脚のだるさ、痛みなどが重なれば要注意「下肢静脈瘤」とは?>>加齢や運動不足、職業などが発症に関連する
静脈では、そばにある動脈の拍動や筋肉・内蔵の動きによって血液を心臓に戻します。心臓の拍動を受け、拍動流である動脈とは対照的に、まさに「静かな血管」なのです。そのかわり、血液の逆流を防ぐために弁がついています。
下肢静脈瘤は基本的に心臓よりも下の静脈にできます。瘤の付近では血液が逆流し、滞った血液が静脈を膨らませています。この血液の逆流には、加齢によって静脈弁が変性する、血液量が増えて静脈が太くなり、弁のサイズが合わなくなる、肥満や妊娠などで腹圧が高くなる、脚を動かさないために脚の筋肉が静脈血を戻すポンプとして十分に働かないといった背景があります。
シェフや板前、美容師、教師など立ちっぱなしになることが多い職業の人には起こりやすくなります。また、心臓が悪いと静脈がうっ滞しやすいことも明らかになっています。
妊娠・出産時になりやすく、高齢になると増えますが、「女性ホルモンは血管拡張作用を示すという報告もありますが、静脈瘤に直接かかわるという明確なエビデンスはありません」と小川先生。
なお、「下肢静脈瘤は深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)や肺塞栓症といった血栓の形成やそれによる塞栓とかかわるのではと心配する患者さんもいます。下肢静脈瘤はこれらの病気の危険因子の一つではありますが、関連は軽度とされているので、あまり心配しなくてもいいでしょう」。
下肢静脈瘤が形成されるメカニズム
【静脈弁】血液の逆流を防ぐために静脈には弁がついている。 【静脈瘤】血液が滞り、静脈が瘤状に膨らむ。 【静脈弁の異常】加齢などによって静脈弁が変性し、きちんと閉まらなくなって、血液の逆流が起こる。 【※】筋肉の減少、脚を動かさないなどで静脈にかかる圧力が減る。静脈では近くを通る動脈の拍動、筋肉や内蔵の動きによって血液を心臓に戻している。静脈には血液の逆流を防ぐ弁があるのも特徴。加齢などによって静脈の弁に異常が生じると血液が逆流するようになって、静脈内に血液が溜まり、静脈瘤を形成しやすくなる。また、運動不足、立ちっぱなしの状態では筋肉が動かず、静脈血がうっ滞して、静脈瘤の引き金になる。静脈瘤は大伏在静脈、小伏在静脈のどこにでもできる可能性がある。特に深部静脈との接合部にはできやすいため、症状が出ている箇所に加え、接合部を超音波検査で丁寧に調べる。