「エンターテイメントとして楽しんでいただける“悪”を目指して演じます」── 松雪泰子さん
それでは“悪”を演じることに、演じ手はどんな心情を抱くのだろうか。
「私がかつて演じた役でいえば、新感線☆RX『五右衛門ロック』の真砂のお竜が挙げられますが、『ルパン三世』の峰不二子のような役割で完全な悪役でもありませんでした。今回は設定自体がかなりエキセントリックではありますが、それをどう表出させるかどうかは、いのうえさんの采配によると思います。髙嶋さんとともに演じる夫婦がどれだけ生ききっているかで、作品の方向性が決まってくるくらいのインパクトがあると思いますので、それを楽しみにしています。悪とはいっても陰の感じはありませんから、お客さまに楽しんでいただけるような“愛される悪”になると思います」
“型”の要素も含んだいのうえ歌舞伎の魅力
作品への期待が募るが、これまでの経験で見出したことについても伺った。
「“いのうえ歌舞伎”と銘打っているのには“型”で見せていくところがあって、実際に当時(市川)染五郎さんだった今の(松本)幸四郎さんがいらして、所作指導をしていただいたことがあります。それが“型で芝居をする”という私にとって初めての経験でした。それからは歌舞伎を拝見するようになったのですが、型で見せることの深さというものを感じていて、それをいのうえ歌舞伎でも発揮できたらいいなと思います」
公演中のハードな日々を送るなか、松雪さんはその美しさや疲れをどのようにケアしているのだろうか。
「演劇は映像の仕事に比べると規則正しくてリズムが作りやすくて、メンテナンスもしやすいです。整えていくことを意識して、自宅でできることをかなり取り入れています。自分で肉体の骨格を調整するメソッドのインストラクターの資格も取りました。そうすればたとえ地方の公演に出演中であっても、自分で直せます。肉体はそのメソッドでケアしていますが、仕事のオンとオフの切り替えには瞑想をするようにしています。脳のストレスがクリアにならないと体もクリアにはなりません。その日に起きたことをリセットするという意味でも瞑想と運動は、毎日朝晩と欠かせません。とはいえ、家で犬が迎えに来てくれると自動的にオフに。とても癒やされていますね」
松雪泰子/まつゆき・やすこ
1991年に女優デビュー。以後、テレビドラマ、映画、舞台などで幅広く活躍。近年の主な出演作にドラマ『邪神の天秤 公安分析班』(2022年2月)、『松尾スズキと30分の女優2』(2022年3月)、映画『甘いお酒でうがい』(2020年)、舞台『海王星』『藪原検校』(2021年)など多数。劇団☆新感線はいのうえ歌舞伎『神州無頼街』で5作目の参加となる。
2022年劇団☆新感線 42周年興行・春公演
いのうえ歌舞伎『神州無頼街』
座付き作家・中島かずきによる書き下ろしの伝奇時代劇。劇団☆新感線の主宰・いのうえひでのりが演出する幕末の富士の裾野を舞台に、歌に踊り、立ち回りで彩る王道「いのうえ歌舞伎」の最新作である。出演は福士蒼汰、松雪泰子、髙嶋政宏、粟根まこと、木村 了、清水葉月、宮野真守ほか。
東京建物Brillia HALL2022年4月26日〜5月28日
S席1万4800円ほか(全席指定)
サンライズプロモーション東京:0570(00)3337(平日12時〜15時)
URL:
http://www.vi-shinkansen.co.jp/shinshuburaigai/ 表示価格はすべて税込みです。
撮影/本誌・坂本正行 構成・文/山下シオン ヘア&メイク/石田絵里子 スタイリング/飯田恵理子〈CORAZON〉
『家庭画報』2022年5月号掲載。
この記事の情報は、掲載号の発売当時のものです。