脳卒中や認知症のリスク発見と予防のために「脳ドック」
加齢とともにリスクが高まり、命と尊厳にかかわる重大な脳卒中と認知症。脳ドックの進歩とともに、その兆候をより詳細に調べられるようになりました。結果を生活習慣の改善と予防に生かすことにも、脳ドック受診の意味があります。
新百合ヶ丘総合病院院長 笹沼仁一先生福島県立医科大学卒業。日本脳神経外科学会専門医・指導医。日本脳ドック学会評議員。外来診療、脳ドック、救急医療を中心に診療と後進の指導育成に尽力。年間数千件に上る脳ドックの解析・解説実績は国内随一。なぜ必要?
脳の病気は早期に症状が出にくい。女性は更年期以降、脳卒中のリスクも増えてくる
1980年代後半に、くも膜下出血を未然に防ぐために未破裂脳動脈瘤を発見しようと始まった脳ドック。その後、高齢化社会のニーズに応え、現在は「脳卒中と認知症の早期発見」を目的に実施されています。
脳の病気は早期には症状が出にくく、通常の人間ドックのデータから見つけるのも難しいため、無症状のうちに脳の内部を検査することは有効な予防法だといえます。
脳卒中は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など脳血管障害の総称で、突然発症して重症になるケースも多い怖い病気です。男性に多いイメージがありますが、更年期以降の女性にとっても他人事ではありません。エストロゲンの作用が低下してコレステロール値が上がり、動脈硬化が進みやすくなるからです。「気になるのは、その年代の女性に要因となりうる糖尿病や高血圧がないのに大脳白質病変という白い部分が強めに現れるケースが多く見られることです。大脳白質病変は、進むと脳梗塞や認知症のリスクとなる虚血性の変化で、エストロゲンの低下が関係しているのではないかと推測されます」(笹沼仁一先生)
体の節目である更年期は脳にも加齢性の変化が生じ始める年代です。50歳前後は脳ドック受診を考えるよい機会だといえます。
このような人におすすめ
●脳卒中、認知症の家族がいる
●高血圧、糖尿病、脂質異常症がある
●動脈硬化の進みやすい50歳以上
●更年期をきっかけに脳の状態を知っておきたい