認知症の人は周囲の感情に敏感。介護者も明るい気持ちになれるよう、自分を大切に

介護者が自分らしくいることは認知症の人の幸せにつながる

この理想的なケアを実践するには、介護する環境を整えることが不可欠で、なかでも「ゆっくりとした時間の流れ」をつくることが最も大切だと和夫さんは説いています。

同時に、父はそのことが最も大変なことだとも指摘しています。家族は限られた時間の中で介護しなければならないうえに、認知症の人に振り回されてイライラすることも多いからです。家族がこのような状況に置かれてしまうと、パーソン・センタード・ケアの実践は望むべくもありません。

忘れがちなことですが、認知症の人が望むケアを実現するにはその介護をする人の心理的な体制を整えることが第一でしょう。介護ストレスが増えないようあなた自身を大切にすることが認知症の人の幸せにもつながります。──和夫さん

そこで、父は忘れがちなことだけれど、介護する人のストレスを増やさないようにする介護体制を整えることが第一だと常々語っていました。すなわちデイサービスをはじめ、さまざまな介護サービスを上手に利用して一人で抱え込まないことが肝心です。また、心の健康を保つためにリフレッシュする時間も定期的に確保したいものです。




和夫さん（写真右）は聖マリアンナ医科大学で認知症の臨床と研究に邁進し、多くの認知症専門医を育てた。同時に看護師らとともにパーソン・センタード・ケアを実践し、その普及啓発活動は晩年まで続いた。　写真提供／長谷川 洋さん

私は、介護する人にもパーソン・センタード・ケアの考え方を用いて、その人らしさを大切にすることがとても重要だと思っています。なぜなら介護者が自分らしくいられることは、認知症の人の幸せに確実につながるからです。

介護は休みなく続きます。認知症の人に寄り添いつつ、一方で周りの協力を得ながら適度に離れつつ、どうか「頑張りすぎない介護」を心がけてください。