ピンクのダリアを生けた右の棚。動きのある枝ぶりのネコヤナギを共に挿した。 左の棚のデコレーション。あえてダリアの茎は短めに。雛壇に用いられる橘や桜木飾りの丸みを帯びたフォルムを連想させる、ふっくらとしたダリアの花形や、花器の模様を強調させている。Tips4
“対(つい)”を意識してデコレーションを
「いつまでも仲睦まじくという気持ちを込め、照明を置いている棚も右は女雛、左は男雛のイメージで“対”になるようにデコレーションしているんです」。
インテリアレッスン8で紹介したリビングの収納家具の一角も、雛まつり仕様に。ウィリアム・モリスの植物柄を銀色で描いたガラス花器に、右はピンク色、左には白いダリアを飾りました。“灯り”ד花”の組み合わせに、思わず耳の奥で童謡『うれしいひなまつり』のメロディーが流れてきます。
「桃や菜の花といった上へと伸びる花材は、形よく生けるのが難しく、ともすれば古典的な雰囲気になりがちです。ダリアなどの丸みを帯びた花はあしらいやすくておすすめ」なのだそう。
これみよがしに主張しすぎることなく、さりげなく花の色で雛まつりを表現。一つのテーマが、イメージの力によって美しく自由に広がってゆくインテリアコーディネートの面白さを感じさせるデコレーションです。
1曲が幅28cm×高さ60cmとコンパクトでありながらも、広げた途端に粛然とした空気感を演出する金屏風。使わないときには折り畳んで収納できるのも魅力。裏面は異なる色柄のからかみで、両面で使えるように仕立てた。Tips5
屏風を効果的に使って飾る場をしつらえる
「屏風は、日本人の知恵が詰まった素晴らしい暮らしの道具だと思います。1枚立てるだけで、がらりと場の印象を変える力があるんです」。
雛まつりをはじめとする、和モダンなしつらいに使いたいと多美保さんが誂えたのは、棚の中ぴったりと収まるサイズの一双の屏風。東上野で江戸時代から続いている江戸からかみのお店「東京松屋」で製作してもらいました。
金砂子地に、同じく金で伝統的な菊立湧文様を表現したからかみは、摺りから特注したもの。金地に金の文様を摺ってなじませるという発想に、伝統的なアイテムをモダンに使いこなす多美保さんらしさを感じます。
版木に雲母や胡粉をなどの顔料をつけて手摺りした文様が、照明の光によって浮かび上がる様子は、なんとも風雅。棚の中が華やかで重厚感あるしつらいの場に様変りしました。
横瀬多美保/Tamiho Yokose
インテリアスタイリスト
東京都生まれ。テーブルコーディネーター、インテリアスタイリスト。テーブルコーディネーターの故クニエダヤスエ氏に師事。女性誌や料理本、百貨店のディスプレイなどのスタイリングに携わる。新旧、和洋を自在に織り交ぜた、モダンでエレガントなコーディネートに定評がある。『家庭画報』とのおつきあいは30年近く。流行や時代の変化をしなやかに受け止めながら、幸福感漂う美しい暮らしを提案し続けている。
『テーブルコーディネートから始まる 美しい暮らしのインテリア365日』 2019年10月2日発売!
『家庭画報』をはじめとする女性誌で活躍する、インテリアスタイリスト・横瀬多美保さん。ご自身の1LDKでの暮らしを1年間にわたり追った『家庭画報.com』の人気連載が、ついに一冊の本になりました。コーディネートの組み立て方、“自分らしい”空間の作り方も初公開! 今すぐ活用できる暮らしのtipsが満載です。